涙雨を極甘なチョコに溶かして

「ムカつくから、あんたも来て!」


 私を掴んでいる手とは反対の手で美和ちゃんが捕まえたのは、席に座っていた環くんの腕で。

 キョトン顔の環くんを有無も言わさず立ち上がらせ、廊下に連れ出そうと引っ張っている。


 もちろんこの状況を、環くんの彼女が許すわけもなく


「環くんをどこに連れていく気ですか? 今から私の作ったお弁当を食べるんですよ」
 

 花音ちゃんは必死な顔で、私たちのところに駆けてきたんだけど……


 美和ちゃんは動じない。

 まるで教室内を氷漬けにする直前の雪女のよう。

 冷酷な目を花音ちゃんに突き刺し、「だから?」と低い声で威嚇すると


「私は今、なごみと珠須島環に用があるって言ってるの!」


 ドスのきいた声を張り上げ

 花音ちゃんの動きを封じ

 私と環くんを教室の外に連れだしたのでした。







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