涙雨を極甘なチョコに溶かして
写真部の部室に二人だけ


 あの……この状況……

 私にどうしろというのでしょうか?


 今わたしがいるのは写真部の部室。

 教室を半分にカットしたような、縦長のお部屋。

 部屋の真ん中には4つの長テーブルが向かい合うように置かれていて、役目待ちのパイプ椅子たちが壁に立てかけられている。


 写真部の部室に足を踏み入れたはいいけれど、どこを陣取ればいいかわからない。

 胸まで伸びる髪を指でこすりながら、私は入ってきた時に閉めたドアの前から動けずにいるんだけど。

 環くんは違う。

 部屋に私と二人だけの状況でも、取り乱すことなく無表情のままで。

 1人で部屋の奥に向かってツカツカツカ。

 窓の外を眺められるように設置されているカウンター前の椅子に腰かけたかと思ったら、天板にのせた腕に顔をうずめ、お昼寝を始めてしまったんだ。


 環くんって相変わらず自由人だな。

 きまぐれで不愛想な猫みたい。

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