涙雨を極甘なチョコに溶かして


 10メートルほど先にあるカウンター。

 そこで顔をうずめるように眠り込んでいる環くん。


 彼を置いて私は教室に戻ればいいんだ、今すぐに!

 なんて、胸のザラザラをはぎ取る解決策を思いついたけれど。


 正直、教室に戻るのも複雑。

 クラスメイトから修也君のことで突っ込まれるのは、目に見えている。

 女性アイドルと見間違うほど可愛い顔をしたアンニュイ王子と、どこに行っていたの?

 環くん推しの子たちからの追及も、なかなかしつこそうだし。


 午後の授業が始まるギリギリまでここにいるのが、ベストっぽい。

 なんて思ってみたり。


 ……いや、違うか。

 ベストとか最善策だからじゃない、私がここにいたい理由は。


 大好きな人と二人だけの夢みたいな空間から、私は外に出たくないんだ。

 環くんに彼女がいるってわかっているのに、私って性格悪すぎ……

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