涙雨を極甘なチョコに溶かして

 中学の時の環くんが、今と違いすぎるって?

 そうだね。

 高2になった今、休み時間は寝るか外を見つめるか。

 笑顔なんて、花音ちゃんにしか見せなくなちゃったし。

 でも元々は、コミュ力ありまくりの陽キャくんで。

 女子顔負けのキュートな笑顔をふりまきながら、誰にでも話しかけちゃうタイプだったんだ。

 
 中1の時、別クラスの私と修也くんが仲良くなるのに、あまり時間はかからなかった。

 私が環くんの幼なじみということで、警戒心を緩めてくれたのかも。


 廊下ですれ違うたびに、環くんが私をからかってきて。

 私は笑いながら、環くんに冗談を返して。

 環くんの隣を陣取る修也くんが「二人とも仲が良すぎだね」と、メガネの奥の瞳を優しく揺らしながら穏やかに微笑んでくれる。


 私はそんな温かい時間が大好きで。

 楽しくてたまらなくて。

 環くんに構ってもらえる幸福感に、浸ってばかりいて。


 修也くんには、絶対にバレていると思っていたんだ。

 私が好きな相手は、珠須島環くんだってこと。

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