涙雨を極甘なチョコに溶かして
歩いて歩いて、野いちご学園よりもはるかに大きい建物の裏口についた。
私は制服姿のまま。
胸まで伸びたストレート髪を手ぐしで整え、自動ドアを通り抜ける。
裏口入ってすぐにある窓口。
紙に名前を書き、私はカウンター越しのスタッフさんに軽く頭を下げた。
ここから目的地までは、目をつぶってでもたどり着ける。
エレベーターのボタンも、まぶたを閉じた状態で間違えずに押せるんじゃないかな。
中2から3年間ずっと、平日の放課後に通いつめているだけあって
「オオー、なごみちゃん! 今日も来たのね」
「制服着てるの珍しいじゃん。なごみちゃんって可愛すぎなんだから、もう!」
と、私の名前をフレンドリーに呼んでくれる顔見知りさんも多いんだけど……
全員が全員、私をウエルカムなわけじゃない。
笑顔を絶やさないようにはしているけれど
――今日も、鉢合わせませんように
目的地のドアを開け中を確認するまでは、いつも恐怖でビクビクなんだ。