涙雨を極甘なチョコに溶かして

 でも一番つらかったのは、修也くんが入院して一週間くらいたった頃かな。

 梅雨のなか休み中にも関わらず天気予報が外れて、雨が地面に叩きけるような酷い土砂降りの日。

 修也くんが眠る病室で、顔を歪めながら私が窓の外を眺めていた時。

 お見舞いに来た環くんに言われたんだ。


 『修也の妹の花音ちゃんと付き合ってる。これからは俺に話しかけないで』って。

 
 
 

 面会終了時間は夜8時。

 それまで私は、いつもベッドの隣に椅子を置き座っている。
 
 瞳が大きくて、美少女顔の環くんとは対照的。

 ベッドで眠り続ける修也君は、日々男っぽい顔立ちに変化していて。

 スポーツ男子が好みそうな短さに、髪がカットされているからかな。

 3年前のような頼りなさげな雰囲気は、一切ない。

 トレードマークの眼鏡をかけたら、頼もしい学級委員長に見えそうなほど。
 
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