涙雨を極甘なチョコに溶かして

 修也くんの寝顔を眺める私は、答えの出ない問題挑戦しては頭を悩ませてばかりいる。

 目覚めたら、修也くんは私になにを望むのかな?

 修也くんが日常生活を取り戻したら、私は彼に対してどんな罪滅ぼしをすればいいのかな?


 一生彼の隣にいてとお願いされたら……

 私は……

 私の恋心は……



 脳内に浮かび上がった、環くんが幼い頃に振りまいていたエンジェルスマイル。

 3年前までは、環くんの笑顔を幼なじみの私が独占していたのに……

 過去の幸せと現実の辛さのギャップに心が痛んだ瞬間、ハッと我に返った。


 全然気がつかなかった。

 病棟にしっとりとしたメロディが流れていたなんて。


 面会終了時間を知らせる、聞きなれた音楽。

 帰宅を促された私は、椅子から立ち上がり


「また明日も来るね」


 夢の中の修也くんに届けとばかりに、満面の笑みでニコリ。

 カバンを肩にかけ、病室を後にした。






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