涙雨を極甘なチョコに溶かして
環くんの想い


 面会者用の出口を出て、軒下で立ち止まる。

 傘を学校に忘れてきちゃったな……

 雨が降っていなかった下校時あるある……か。

 漆黒の空から降り注ぐ雫たちを瞳に映し、ため息とともに私の肩がガクリと落ちた。


 ぴちゃぴちゃと水たまりを跳ねる程度の弱り雨。

 ではあるものの、傘でカバーしないと家に着くころにはずぶ濡れ間違いなし。

 あぁ……この子だけは、濡れたら可哀そうだよね。

 カバンに揺れる、げんこつサイズのカンガルーのぬいぐるみ。

 丁寧に取り外し、カバンの奥にしまいこむ。


「よし、雨に打たれながら帰ろう」


 気合いを入れるため、両手のこぶしを3回上下にブンブンブン。

 屋根がない通路に、一歩踏み出そうとしたのに


「梅雨の真っただ中なのに、傘ないの?」
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