涙雨を極甘なチョコに溶かして

 だって見ちゃったんだもん。

 壁に飾ってあった、環くんが撮った写真を。

 映っていた場所は間違いない、修也くんが滑り落ちたあの階段だ。


 3年前の事故現場を再現したかったのかな?

 土砂降りの中で、わざわざ撮影されたものだった。


 あの写真を見た時、私は確信したんだ。

 修也くんの事故以来、環くんが私に笑わなくなったわけを。

 幼なじみとしてあんなに仲が良かった私を、いきなり拒絶するようになった理由を。


 恨んでいるんだよね、私のこと。

 心の底から。

 私を瞳に映したくないほどに。


 私に対する怒りが収まらないんだよね?

 なごみが自分に告白なんかしなかったら……

 なごみが石段を踏み外さなかったら……

 修也は今も自分の隣で笑っていたのに……って。

 大事な親友が眠り続けているのは、私のせいだって思っているんだよね?


 それに加えて、大好きな彼女を悲しませている私の存在が、憎くてたまらないのかもしれないな。

 兄が眠り続けることに対して、花音ちゃんは心を痛め続けていてるはずだし。

 
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