苦手だったあなたへ
「月葉、話したいことがあるんじゃないか？」


「もうお父さんにも説明したわ。話したいことがあれば何でも言いなさい。」


「怒らないの？」


何か自由に話せる空気感を作り出してるけど。


2人が私に何も言わないのが不思議でたまらない。


普通、もっと切羽詰まった感じで問い詰めるんじゃないのかな。


「怒る？あなたは怒られたいの？」


「そうじゃないけど……でも親として何か娘に注意するとかあるじゃん。」


「別に、怒りたくてわざわざ帰国したんじゃないのよ。月葉が思ってること、私たちに説明したいことを話しなさい。」


両親ともども変わっている。


まぁ娘の私がここまで変人だもん、当たり前か。


「2人が出て行ってから鍵をなくしたことに気が付いたの。でも、その時たまたま紺野先生が助けてくれたの。お母さんたちに連絡すればよかったし、もっと他にも方法があったのかもしれないけど、何となく紺野先生の家について行っちゃった。」


私の言葉を黙ったまま聞く2人。真剣な表情に変わって、私も少し緊張する。


「それでね、紺野先生、最初はチャラチャラした人だと思ってたけど、一緒に住み始めてからいい人だなってわかった。私が不安になるようなことはしてこなかったし、すごく気遣ってくれた。私、紺野先生が好きなんだ。」
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