苦手だったあなたへ
まず、生きていくために再就職する必要があるけど、もう教職には戻れないかもしれない。


しばらくは貯金があるからいいけど、この先ずっとは生きていけない。


早速ローテーブルにノートパソコンを広げて、作業を始めた。


始めはフリーターでも何でもいい。


とりあえず稼がなきゃ。




真面目にスーツを着るのは何度目だろう。


あまり首が閉まるのも嫌なので、できればノータイがいいけど、そんなこと無理な話だ。


「あの人ね、生徒に手を出したとかいう。」


「やだわ、うちの子大丈夫かしらね。」


やっぱり、保護者の方々、特に娘を持つお母さんたちはざわざわと騒いでいた。


俺が出ていくときまでずっと痛い視線をぶつけてきて、聞こえよがしに俺の悪口を言う。


仕方ないことだけど、そこまでする必要があるのかと開き直ってしまう自分がいた。


だめだめ、事の重大さを真剣に受け止めなきゃ。


俺はもう、白銀高校に戻ってくることはない。


「紺野先生、もう行くのですか?」


「……旗本先生。何ですか、まだ言いたいことでもあったんですか?」


「いえ。中川さんは学校に来るのをやめてしまったし、あなたも辞めちゃうし、全部終わったんだと思っただけです。」


「月葉、やっぱり学校には来てないですか。」
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