苦手だったあなたへ
月葉の方は月葉の方で学校に行っていないわけだから、お互い暇な平日の昼間に喫茶店で落ち合った。


「紺野先生、お久しぶりです。大丈夫ですか?精神的には。」


「俺は全然大丈夫だよ。それより、今月葉学校に行けてないんだろ。大学はどうするの?」


「バイトしながら受験勉強してます。その辺のとこでいいので。」


「ごめん、俺のせいで月葉の学歴まで左右しちゃって。」


月葉が学校にそのまま通えてたら、白銀大学を出て、立派な高学歴を持つ1人になれてただろうに。


月葉はそんなふうに謝る俺を見ても、何も怒るような顔をせず、むしろ心配そうな目を向けてきた。


「全然、私こそ先生の職を奪うようなことして申し訳ないです。だって、今ニートかフリーターでしょ?」


「いや、この間友達に新しい仕事紹介してもらったから。」


それを聞くと月葉は一安心してにこりと笑った。


無理のありそうな顔だ。


「月葉、やっぱり教師と生徒が恋に落ちて幸せになれることなんてそうそうないんだよ。」


「でも、私は先生のこと諦めきれない。卒業してもダメなの?」


「知ってる人には白い目で見られるよ?それでいいの?」


それで、月葉が嫌な思いをしたら俺は一生後悔する。


もう悲しませたくないから、だから離れた方がいいと思う。
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