苦手だったあなたへ
「じゃあさ、先生が勉強教えてよ!その新しい仕事に就くまででいいからさ!」


「話聞いてたか?卒業するまではダメだよ。」


「ケチ!まぁでも、本当に良かったよ、また先生に会えて。もう全部今日で終わりにされるかと思った。」


そのつもりでいたことは秘密にしておこうか。


月葉はそう言って1人で安心すると、メニューを手に取ってパラパラとめくり始めた。


「じゃ、オムライスとコーヒーゼリーとガーリックトーストで。」


「あっそ。じゃ、俺はナポリタンだな。」


「先生、夏の旅行で行った喫茶店のことも覚えてたの?」


「当たり前だろ、好きな人のことは全部覚えてる。」


自信満々にそう言うと、月葉はちょっと引いた顔をして、「メンヘラ……」と呟いた。


月葉だって覚えてたくせに。


この時間が何よりも幸せだった。


もう一緒の家路に着くことが出来ないのは残念だけど。


喫茶店を出ると、月葉に連れられて、しばらく電車に乗った。


「どこ行くの?」


「まぁまぁ、とりあえず着いてきてください!」


連れてこられたのは大きい広場がある公園だった。


凄い自然豊かだな、周りを見渡せば200メートルはあるビルが立ち並んでるのに。


「あそこのカフェでコーヒー買ってきましょうか?」
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