苦手だったあなたへ
紺野先生は、担任だし、もう4月の中旬だけどまだ黒板に書いてる字を見たことがない。


去年は1年生のクラスだったし。


若い男性教師というのは、大抵字が下手というイメージがあったけど、どんな字を書くんだろう。


黒板にスラスラと書き始めた字を見ると、思っていたより綺麗だった。


くせも多少あるけど、想像以上に上手でちょっと見直した。


食事マナーといい、筆跡といい、チャラそうというイメージが段々と薄れていく。


まぁ、チャラいのはチャラいか。


「体育祭の説明はだいたいこんな感じな。わかんないところとか無かったらもう終わるけど……。」


そう言って教室内を見回したけど、誰も何も言わないので、初めての委員会は終わった。


みんながぞろぞろと帰っていく中、私は紺野先生に引き止められた。


「なんですか?」


「月葉、帰りに買い物行くだろ?醤油なくなりそうだから足しといて。ついでに豆腐も。」


「了解です。木綿でいいですね。」


紺野先生は木綿豆腐派だと言うのはついこの間知った情報だ。


それだけ言って教室を出て、紺野先生の家のそばにあるスーパーに来た。


「えっと、お豆腐は……。」


「豆腐ここですよ。」


豆腐って口に出してたし、私に行ってくれたのかな、と思って振り向いた。
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