苦手だったあなたへ
「あぁ、なんか私まで軽いヤツだと思われたのか!?」
腹が立って、キッチンでシチューをかき混ぜながら思わず独り言を漏らした。
この間の体育では不意をつかれてちょっと、ほんのちょっとだけドキッとしちゃったんだよなぁ……。
「お、できたの?」
「え、あぁできました。」
完成したシチューを見て先生は嬉しそうだ。
私が料理してる間、ずっとスマホ見てたんだからそれはそれはご機嫌でしょうね。
「体育祭近いけど、大丈夫なのか、月葉は。」
「大丈夫です。なんとかやりとげればいいんでしょ。」
私、前の体育の授業を思い出したせいか今もまだ腹が立ってる。
イライラしてるのを紺野先生にぶつけるのは申し訳ない気がする……。
でも元はと言えばこの人だけど。
「月葉はなんの競技だっけ?」
「私は障害物走ですよ。練習も頑張ってます。」
私なりにハードルの飛び方に1番こだわって効率性を重視してやってる。
褒めて欲しいくらいだけど、未だ誰も褒めてくれない。
「そうだそうだ。月葉こだわって練習してたよな、頑張ってるね。」
急に褒められてまたドキッとしてしまった。
紺野先生って、なんで人気なのか一緒にいるとすぐわかる。
別に私は好きになったりしないけど。