苦手だったあなたへ
鍵が……無い……。


カバンの中身を家の前で全部出してみて、30分くらいゴソゴソやってたけど、見当たらない。


家出たとき閉めなかったっけと思って記憶を思い返してみた。


確か鍵を最後に閉めたのはお父さんで……ってことはつまり、私の鍵は家に置いてきちゃったってことだ。


お父さんとお母さんに連絡したところで心配かけるだけの親不孝な娘になっちゃう。


ひとまず、友達の家とか……そうだ、私友達いないんだった。


陰キャすぎて友達のできないのがこんな時に苦労するなんて……。


何をするにも今は冷静な判断ができないから、学校の向かいにある小さな公園に行ってベンチに座っていた。


あぁ、これから私どうすればいいんだろう。


こんなことになるなら着いてけばよかった。


「はぁ……。」


「あれ、うちのクラスの月葉だよね。」


声の方を向くと、私が知ってる顔があった。


「紺野先生、こんばんは。」


「こんばんはじゃなくて、もう8時過ぎだよ?1人でこんなとこで何してるの?」


答えにくい質問……。


私の担任の紺野龍介(こんのりゅうすけ)先生は、体育科の先生でまだ24歳。


アイドルにいてもおかしくないビジュアルに、センターパートと銀縁丸眼鏡がよく似合う。


正直苦手だ。
< 3 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop