苦手だったあなたへ
近くにいた生徒に声をかけた。


もう帰りたかったし。


「ねぇ、1人何円なの?」


「えっと、400円かな。紺野先生が多めに払うらしいから。」


100円を4枚置いてから扉を開いてカラオケを出た。


家のそばにあるコンビニで好きなアイスを3個くらい買ってから家に着いた。


「あれ、中川さん。今帰宅なの?結構遅かったね。」


旗本先生……?なんでいるのかちょっと怖い。


玄関先のフェンスの前で会ったから、少しドキッとした。


多分、紺野先生は女の子たちに拉致されていたし、そんなすぐには帰ってこないから大丈夫だけど。


スマホで時間を確認すると、確かにもう夜8時半を回っていた。


夕方の6時から始まってから、そんなに経っていたんだ。


「はい、クラスの打ち上げが騒がしくて、これでも早く抜けてきたんですけどね。」


そう答えると、旗本先生はそっか、と笑って答えた。


相変わらず、そのどこを見ているのかがわかりにくい視線にドギマギする。


「紺野先生はまだ打ち上げに行ってるのか。」


「ですね。相変わらず、旗本先生と同じように女の子に人気なので。」


旗本先生の表情は夜の暗闇のせいでわからなかったけど、笑っているように見えた。


意味深だなぁ。


というか、アイスがとけちゃうんだった。
< 32 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop