苦手だったあなたへ
「気をつけなよ、月葉可愛いんだから。」


「はいはい。いいですお世辞とか。」


紺野先生にとって、「可愛い」というのは呼吸みたいなものなんだから。


色んな女の子に言ってるんだろう。


「いやいや、お世辞じゃないんだけどな。」


ボソッと何かつぶやいていてよく聞き取れなかった。


簡単に調理を済ませたあと、皿に盛ってテーブルに運んだ。


いつもはダイニングテーブルなんだけど、今日は特別にとソファの横のローテーブルに運んだ。


それから、紺野先生はカラオケじゃ飲めなかったから、と缶ビールを持ってきた。


普段はお酒なんて飲まないし珍しいな。


「紺野先生、その、体育祭色々ありがとうございました。」


ハードルの件も、怪我したことも、私たちが優勝できたことも。


「ううん、別にいいんだよ。俺も楽しかったし。」


体育祭のことを話していると、すぐに時間が経つ。


紺野先生はビールからカクテルに変えたみたいだ。


コップについだりして、凝っている。


私もジュースを出した。


「ハードル、誰がやったのとか思わないの?」


「別に、誰でもいいです。ただ7センチの差で転ぶなんて情けないなってだけで。」


負けたのはハードルとかじゃなくて、私の運動不足のせいだと思う。
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