苦手だったあなたへ
葵ちゃん、私も久々に会えてうれしいなぁ。


いつも通り可愛らしいアイドル顔負けの笑顔だ。


「葵ちゃん部活入ってたんだね。にしても今日暑くない?」


熱中症警戒アラートなんかもあるから、外部活は休みのところも多い。校舎内ではテニス部や野球部が筋トレや廊下ランニングをしている。


「はい、私は美術部に入っていて、次のコンクールに出す作品を今手掛けてるんです。」


「ジュース買いたくてちょっと抜けてきちゃって。」と付け足して、葵ちゃんは可愛く照れ笑いをした。


美術部ってことは絵も描けるの!?


マジでできないことなさすぎじゃない?


「中川さんは部活に入ってなかったんじゃ……?」


「あぁうん、よく知ってるね。ほら今日男バスの顧問もマネも休みだから、紺野先生と2人で代わりに入ってるの。」


苦笑いでそういうと、葵ちゃんは一瞬怖い表情を見せた。


どうしたんだろう。


「夏休み中なのに連絡来たんですか?てか連絡先交換していたんですか?」


あっ、確かに……。


普通に考えて、夏休み中に担任の先生にそんなことで呼び出されるのはおかしいよね。


私の口が滑っちゃったせいで怪しくなっちゃった。


何とか葵ちゃんを納得させるような嘘をつく必要があるけど、この子を私が欺くなんてできるのかな?
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