苦手だったあなたへ
毎回思うんだけど、なんでこの2人は険悪な雰囲気を作り出すのだろうか。


間にいる私が1番苦労していることにいい加減気づいてよね。


「ま、もう遅いので帰りましょうよ。また明日、紺野先生も旗本先生も。」


葵ちゃんの真似しちゃった。


しかも何でか紺野先生、って言葉だけ強調して言ってしまった。


私の悪い癖だ。


心で注意深くなっていることほど態勢がなくなりやすい。


とにかく、私が責任を持たされるのは嫌なので、余計なことを口に出さないようにその場を離れた。


まだ2学期が始まってすぐだというのに、私の心の中はたくさんの考え事でいっぱいだった。


ご飯を作って待っていると、紺野先生が家に帰ってきた。


「ただいま。ねぇ、月葉。ちょっと話したいことがあるんだけど。」


「え、何ですか?」


話したいことと言われると少し緊張してしまう。


まさか別れ話とかではないと信じたいところである。


「あのね、旗本先生には気を付けたほうがいい。」


「は?旗本先生?急に何の話ですか。」


「俺の推測だと、旗本先生は月葉のことが好きだ。」


は?


声にも出ず、私は開いた口がふさがらなかった。


だって、紺野先生が何を言っているのか私にはちっともわからないから。
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