7.5日目のきみに会いたい

第11話 耳に響くシャワー音

部活を久しぶりに参加した。
蒸し暑い日だった。
雨が降っていて、たまたまバスケ部と
バレー部は遠征の日で体育館を使わせて
もらっていた。

フットサルと同じルールでやってみようと
3人対3人で対決した。

サッカーをやる時と違って、
1人がサボるとボロが出やすい。
3人がこまめに動かないと勝ち点を取りに
行くのは難しいのだ。

屋外のゴールと違って大きさは小さい。
キーパーの体でボールを守れるんじゃない
かという小さいゴールだった。
屋内用シューズも素材が変わっている。
スパイクがない。
ボコボコのゴムになっている。

外でやるよりもぼんやりする時間もない。
いつもずっと動いてる。
瞬発力が試される。

澄矢と快翔は、新しい環境でやる気を
出していた。
サッカーの練習がマンネリ化していたのかもしれない。とても良い刺激になった。
またやりたいと思ったが、いつも体育館を
使うのはバスケ部とバレー部。
はたまた卓球部も使用する。
サッカー部が使える日なんてたかが
しれている。

あまりにも集中してサッカーに夢中になったせいか部室に着くとユニホームは
汗びっしょりだった。

澄矢は、シャワー室に入って、汗を流した。
水が顔にかかる。
汗をかいた体をシャワーの水が
洗い流してくれた。

部室ではざわざわと部員たちが、
話している。
何を話しているかなんて気にしてなかった。
それよりも水とともに響く声が気になった。
反響している。

「なに?」

水の落ちる音が響き、波紋ができる。

「そこにほくろあるんだね。」

いつ言ったか澄矢の声が響いている。

「うん。そう。
 よくわかったね。
 そんなこと普段生活してて
 誰も気づかないよ。」
 
 普通の声になる。
 また河川敷に来ていた。

「え、大体わかるよ。
 歩いてても気づくって。」

「うそ、待って。
 どこのほくろのこと言ってる?」

「ここ。」

 澄矢は、雫羽の首元を指差した。

「えーー、見ないよぉ。
 そして、そんなところ誰も見ない。」

「だって、喉仏は見るよ。」

「そっかなぁ。」

 そんな会話をしたかと思えば…。

「わからないよ!!
 私はは澄矢くんみたいに
 普通の高校生活送ってないから!!」

 感情の掻き乱れがあったのか
 雫羽は興奮していた。
 澄矢は水切りの石を投げ終わってから
 振り向いた。
 どこからその話題になったのか。
 記憶なのか未来を見ているのか
 テープを巻き戻すようにぐちゃぐちゃな
 映像になっていく。

「知ったようなこと言わないで!!」

 澄矢は何を発言して、
 そう言わせてしまったんだろう。
 
「んじゃ、もっと教えてよ!!
 知らないから言っちゃうんだ。
 わからないから、想像で話しちゃうし。」

「……まだ会ったばかりだもんね。」

 雫羽は、うつむいて落ち込んだ。
 その姿を見て、澄矢は、雫羽の手を握る。
 
「俺はどこにも行かないよ。
 ここにいるから。」

 自然と出た言葉だ。
 なんで言いたくなったのかわからない。

 白い光がまぶしく光る。

 一瞬にして、空間が変わった。
 サッカー部の部室のシャワールーム。
 
 シャワーの水が出しっぱなしで、
 地面に寝ていた。
 誰も気づかなかったようで、
 慌てて、跳ね起きた。
 ほんの数分だったんだろう。
 周りの部員たちは澄矢のことを
 気にしていなかった。
 
 「いた…。」

 耳鳴りと頭痛がした。
 
 毎週会っていたはずの出てくる雫羽は、
 だんだんと頻度が高くなっていた。

 7.5日目の他に夢も追加されている。
 その夢も突然の意識の中に
 入り込むようだった。
 呼ばれているのだろうか。

 頭をおさえて、タオルで体を拭いた。

「シャワー長いな。大丈夫か?」

「あ、ああ。
 快翔、今日何日で何曜日?」

「もはや、1日が終わるっていうのに 
 それ聞く?
 えっとな、19.5日の月曜日だぞ。」

「は?」

「だから、19.5日だって。」

「三日月曜日じゃないの?」

「それは昨日な。」

「何それ。わけわかんねぇ。」

 頭を掻きむしった。
 自分のスマホを確認するが、
 カレンダーは快翔と同じ表示をした。

(俺は今、どっちの世界にいるんだ?)

 訳がわからなくなっている。
 でも確かなことは月曜日を
 拒否しなくなった。

 頭の中は
 カレンダーがわけわからないことと
 雫羽には会えるのかと二択しか
 考えていない。

 あんなに嫌がっていた月曜日のことなど
 考える余地も与えなかった。
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