7.5日目のきみに会いたい
第19話 現実か幻か
河川敷で喉が詰まる思いで、しゃがんでいると突然、目を覆いがぶされた。
「だーれだ!」
「やめろよ」
一気にテンションが落ちた。両眼を手で覆ったのは、高音の声だったが、雫羽ではなかった。期待していたが、違うことにかなりショックを覚える澄矢。
「なんだよぉ。雫羽の真似してみたのに、喜べよ」
「今の俺はそんな気分じゃねぇんだよ」
「け、よく言うよ。心配して、こうやって、河川敷に連れて来たのに……」
「は?お前が俺をここに連れて来たのか?」
首をかしげたのはクラスメイトの快翔だった。澄矢は、今いるこの場所がてっきり次元のゆがみだと感じていた。さっきまで雫羽の入院していた病院にいたはずだった。 風が吹きすさぶ。周りの草木が揺れて、小鳥たちが飛び立った。
「なに寝ぼけたこと言ってるんだよ。俺が、学校からお前の腕を引っ張って、
気分転換にってここに連れて来たんだろ?雫羽が亡くなって落ち込んでいたから」
「え?!」
澄矢は気が動転していた。快翔の言ってることを理解できなかった。
「な、亡くなったって、いつ?」
「亡くなったって、知ってるだろ?教室にいられないって、授業も受けずにずっと屋上にいたじゃんか。さすがに放課後だから、ここの方がいいだろって……」
澄矢は顔を両手で覆った。さっきまでの空間は過去の話で、ここはきっと未来。
まだ病院での話すら終わってない。なんでここに飛ばされたのだろう。
スマホをズボンから取り出し、カレンダーをチェックした。5月X日三日月曜日 という文字が浮かぶ。 現実にはあり得ない文字が表示されている。
ここは夢、なのか。ということは、まだ雫羽は亡くなっていないはずだ。
「なぁ、快翔。今日って、三日月曜日だよな? みんな欠席してたか?」
「え?あ、ああ。そうだな。ほとんどのやつは休みだな。斎藤先生は来ていたみたいだけどさ。もう、テッパンなメンバーだなって笑ってたぞ」
「あ、そうか。そうなんだ。快翔……俺、学校戻るわ」
「は? 今から行くの? 部活も休みなのに? さっき斎藤先生と別れたばかりだぞ。それに校舎のかぎも閉まってるって」
「俺だけ行くから。先帰ってていいぞ」
「あ……おい」
快翔は手をのばしたが、もうすでに澄矢は、学校の方へ向かって走り出していた。 落ち込む様子など全然なかった。不思議な澄矢を見て、快翔はバックを背負いなおして、家路を歩いた。
道路も車ひとつ通らない。信号機も黄色で点滅している。まるでここだけ昼間だというのに真夜中の世界に来ているみたいだ。信号機の機械さえも休日ってことなんだなと感じる。
静かな町の道路。人っ子ひとりいない。いつも散歩していたご近所のおばあちゃんもルーティン化して毎日同じ時間に走り込みをするおじさんも、グランドゴルフだと楽しみに毎日楽しみしていたおじいさんも、だれも歩いていない。こんな世界があるのかと少し背中が寂しくなった。冬じゃないのに、鳥肌が立つ。半袖じゃなく、長袖のシャツにすればよかったと左腕をさわさわと触った。快翔は雫羽が亡くなったと言っていたが、ここは次元の違う世界。現実でも亡くなっている可能性はあるが、澄矢は、きっとこの空間のどこかにいるんじゃないと淡い期待をよせていた。勘がそうさせている。完全に快翔の言葉は信じていない。うす暗い学校の校門がすっかり閉まっている。ものものしい雰囲気だ。鍵を閉まってる状態に学校に来たことがない。いつもの部活帰りでもまだ校門が開いてる。とても静かだった。警備員が来るんじゃないかという不安が消えた。ここは異空間だと信じている。澄矢は、校門を飛び越えて、
校舎の中に吸い込まれるように中に入って行った。
「だーれだ!」
「やめろよ」
一気にテンションが落ちた。両眼を手で覆ったのは、高音の声だったが、雫羽ではなかった。期待していたが、違うことにかなりショックを覚える澄矢。
「なんだよぉ。雫羽の真似してみたのに、喜べよ」
「今の俺はそんな気分じゃねぇんだよ」
「け、よく言うよ。心配して、こうやって、河川敷に連れて来たのに……」
「は?お前が俺をここに連れて来たのか?」
首をかしげたのはクラスメイトの快翔だった。澄矢は、今いるこの場所がてっきり次元のゆがみだと感じていた。さっきまで雫羽の入院していた病院にいたはずだった。 風が吹きすさぶ。周りの草木が揺れて、小鳥たちが飛び立った。
「なに寝ぼけたこと言ってるんだよ。俺が、学校からお前の腕を引っ張って、
気分転換にってここに連れて来たんだろ?雫羽が亡くなって落ち込んでいたから」
「え?!」
澄矢は気が動転していた。快翔の言ってることを理解できなかった。
「な、亡くなったって、いつ?」
「亡くなったって、知ってるだろ?教室にいられないって、授業も受けずにずっと屋上にいたじゃんか。さすがに放課後だから、ここの方がいいだろって……」
澄矢は顔を両手で覆った。さっきまでの空間は過去の話で、ここはきっと未来。
まだ病院での話すら終わってない。なんでここに飛ばされたのだろう。
スマホをズボンから取り出し、カレンダーをチェックした。5月X日三日月曜日 という文字が浮かぶ。 現実にはあり得ない文字が表示されている。
ここは夢、なのか。ということは、まだ雫羽は亡くなっていないはずだ。
「なぁ、快翔。今日って、三日月曜日だよな? みんな欠席してたか?」
「え?あ、ああ。そうだな。ほとんどのやつは休みだな。斎藤先生は来ていたみたいだけどさ。もう、テッパンなメンバーだなって笑ってたぞ」
「あ、そうか。そうなんだ。快翔……俺、学校戻るわ」
「は? 今から行くの? 部活も休みなのに? さっき斎藤先生と別れたばかりだぞ。それに校舎のかぎも閉まってるって」
「俺だけ行くから。先帰ってていいぞ」
「あ……おい」
快翔は手をのばしたが、もうすでに澄矢は、学校の方へ向かって走り出していた。 落ち込む様子など全然なかった。不思議な澄矢を見て、快翔はバックを背負いなおして、家路を歩いた。
道路も車ひとつ通らない。信号機も黄色で点滅している。まるでここだけ昼間だというのに真夜中の世界に来ているみたいだ。信号機の機械さえも休日ってことなんだなと感じる。
静かな町の道路。人っ子ひとりいない。いつも散歩していたご近所のおばあちゃんもルーティン化して毎日同じ時間に走り込みをするおじさんも、グランドゴルフだと楽しみに毎日楽しみしていたおじいさんも、だれも歩いていない。こんな世界があるのかと少し背中が寂しくなった。冬じゃないのに、鳥肌が立つ。半袖じゃなく、長袖のシャツにすればよかったと左腕をさわさわと触った。快翔は雫羽が亡くなったと言っていたが、ここは次元の違う世界。現実でも亡くなっている可能性はあるが、澄矢は、きっとこの空間のどこかにいるんじゃないと淡い期待をよせていた。勘がそうさせている。完全に快翔の言葉は信じていない。うす暗い学校の校門がすっかり閉まっている。ものものしい雰囲気だ。鍵を閉まってる状態に学校に来たことがない。いつもの部活帰りでもまだ校門が開いてる。とても静かだった。警備員が来るんじゃないかという不安が消えた。ここは異空間だと信じている。澄矢は、校門を飛び越えて、
校舎の中に吸い込まれるように中に入って行った。