7.5日目のきみに会いたい
第29話 交際して初めてのデート
今日は大学もバイトも休みの日。本当は丸一日シフトを入れられる日。
でも今日は特別に休みをもらって、茉大と一緒に外出することになった。
映画館デート以来の外出だ。付き合おうと正式に申し込んでからのデートは初だ。快翔も本当は茉大を狙っていたというが、俺に譲ると上から目線で言われた。それでも、茉大は澄矢のことを気にしていた。快翔のことは眼中になかったらしいと後から知った。
今日は水族館に行きたいと茉大の希望だった。くらげとイルカショーが絶対見るんだと張り切っていた。澄矢はレンタカーを人生初で借りて、隣に茉大を乗せた。運転免許は高校3年生の時に取得済だったが、大学に通うことになると電車移動が多く、めっきり車に乗る回数が減った。長期休みに実家に帰って父の車を運転するくらいだった。運転する機会は少なかったが、自信はあった。
「お願いします」
「はい、頑張って安全運転めざします」
「助手席って緊張するね。めっちゃ近い」
「ご、ごめん。ワゴン車の方良かったよね。狭いかな。これ、普通自動車だけど」
澄矢は、乗りたかったトヨタのプリウスを選んでいた。電気自動車はガソリンを使わずにエコカーであることが魅力的だと思っていた。
「いや、別にいいんだけどね。なんか緊張するな」
そわそわする茉大に澄矢もドキドキしてきた。
「だよね。俺も隣に家族以外の誰か乗せるって茉大が初めてだから」
「え、そうなの? 彼女いたって快翔くんに聞いた……あ、秘密なのに喋っちゃった」
「うそ、快翔がその話していたの? あいつそんなこと俺には何も……でも付き合ってたのって高校生だし。まだ免許も取れなかった時だから」
「ふーん。そうなんだ。高校生デートいいよね。制服デートだし」
茉大はうらやましそうに言う。
「本格的なデートしてないけどね」
「え? それって彼女なの?」
「まぁまぁ、いいじゃない。行こうよ、水族館。海沿いだったよね。新江ノ島水族館って」
「そうそう。綺麗なんだよね、ホームページ見て知った」
「ここからだと1時間ってところか」
澄矢はナビをぽちぽちといじって目的地を設定する。茉大は一緒になって画面を見る。ふと、澄矢の腕が茉大にあたる。横からじっと顔を見た。よくよく間近で見ると全然雫羽に似ていなかった。澄矢は変なフィルターをかけて、雫羽と重ね合わせていたのかもしれない。この人が雫羽だったらいいなという願望があったと。そもそもほぼほぼ、夢でしか会っていない雫羽の顔をどう判別するというのか。自分で自分を呆れてしまう。自分の目は節穴だったとため息をつく。
「澄矢くん、どうかした?」
上目遣いで見つめられて、さらにドキッとする。本当にいつもより顔も近ければ、体も近い。すれすれで茉大の胸があたりそうだ。いけないいけない変な妄想を掻き立てる。生身の人間との交流ができるというありがたさを身にしみて感じてしまう。澄矢はハンドルを切って、目的地の水族館に向かった。休日ということもあり、車線の多い国道は渋滞になりそうなくらい混んでいた。
でも今日は特別に休みをもらって、茉大と一緒に外出することになった。
映画館デート以来の外出だ。付き合おうと正式に申し込んでからのデートは初だ。快翔も本当は茉大を狙っていたというが、俺に譲ると上から目線で言われた。それでも、茉大は澄矢のことを気にしていた。快翔のことは眼中になかったらしいと後から知った。
今日は水族館に行きたいと茉大の希望だった。くらげとイルカショーが絶対見るんだと張り切っていた。澄矢はレンタカーを人生初で借りて、隣に茉大を乗せた。運転免許は高校3年生の時に取得済だったが、大学に通うことになると電車移動が多く、めっきり車に乗る回数が減った。長期休みに実家に帰って父の車を運転するくらいだった。運転する機会は少なかったが、自信はあった。
「お願いします」
「はい、頑張って安全運転めざします」
「助手席って緊張するね。めっちゃ近い」
「ご、ごめん。ワゴン車の方良かったよね。狭いかな。これ、普通自動車だけど」
澄矢は、乗りたかったトヨタのプリウスを選んでいた。電気自動車はガソリンを使わずにエコカーであることが魅力的だと思っていた。
「いや、別にいいんだけどね。なんか緊張するな」
そわそわする茉大に澄矢もドキドキしてきた。
「だよね。俺も隣に家族以外の誰か乗せるって茉大が初めてだから」
「え、そうなの? 彼女いたって快翔くんに聞いた……あ、秘密なのに喋っちゃった」
「うそ、快翔がその話していたの? あいつそんなこと俺には何も……でも付き合ってたのって高校生だし。まだ免許も取れなかった時だから」
「ふーん。そうなんだ。高校生デートいいよね。制服デートだし」
茉大はうらやましそうに言う。
「本格的なデートしてないけどね」
「え? それって彼女なの?」
「まぁまぁ、いいじゃない。行こうよ、水族館。海沿いだったよね。新江ノ島水族館って」
「そうそう。綺麗なんだよね、ホームページ見て知った」
「ここからだと1時間ってところか」
澄矢はナビをぽちぽちといじって目的地を設定する。茉大は一緒になって画面を見る。ふと、澄矢の腕が茉大にあたる。横からじっと顔を見た。よくよく間近で見ると全然雫羽に似ていなかった。澄矢は変なフィルターをかけて、雫羽と重ね合わせていたのかもしれない。この人が雫羽だったらいいなという願望があったと。そもそもほぼほぼ、夢でしか会っていない雫羽の顔をどう判別するというのか。自分で自分を呆れてしまう。自分の目は節穴だったとため息をつく。
「澄矢くん、どうかした?」
上目遣いで見つめられて、さらにドキッとする。本当にいつもより顔も近ければ、体も近い。すれすれで茉大の胸があたりそうだ。いけないいけない変な妄想を掻き立てる。生身の人間との交流ができるというありがたさを身にしみて感じてしまう。澄矢はハンドルを切って、目的地の水族館に向かった。休日ということもあり、車線の多い国道は渋滞になりそうなくらい混んでいた。