7.5日目のきみに会いたい
第34話 幻想の中の再会
白い花畑が辺り一面に広がっていた。白いもやもかかっている。だだ広い草原が遠くにある。
さらに奥には山々が続いている。なんとも自然豊かな場所だ。小鳥たちが優雅に飛び交う。
蝶々たちも色鮮やかな花の蜜を吸って、飛んでいる。なんとも平和な世界だ。
都会の喧騒で生きていると重苦しい空気を感じて生きてるのも嫌になる。
いつの時代も自然豊かな場所は心も豊かにしてくれる。
澄矢は体を起こして、両手を広げて深呼吸をした。
どうしてここにいるかなんて今は考えたくなかった。
過去の記憶は、車に轢かれたことくらいで他は覚えていない。
きっと当たり所が悪くて死んだんだろう。
人間いつ死ぬかわからない。家の中にいてもトラックが飛んできて、命落とす人もいる。
自然の力だと雷にあたるだけでも死んでしまうのだ。
外の世界というものは危険だらけだ。刃物を持った無差別殺人だってどこで発生するかわからない世の中。
それでも生き抜いてきた。車に轢かれて一生を終えたのだ。
生き返ることはできない。
あの時、ああしておけばよかったとか、お金持ちになっておけばよかったとか今はどうすることもできない。
お金は天国に持っていけないし、やり残したことをすることもできない。
草原の上に寝ころんで、手を伸ばして、空に浮かぶ雲をつかもうとした。
つかめるわけないのにとわかっていながら、おかしくなってきた。
すると、見たことある人が顔を覗いて来る。
まつ毛が長く、髪を揺らしていた。白いワンピースの彼女だ。
「澄矢くん、こっち来るの早いよ。まだ呼んでないのに、来てるし」
「雫羽! よかった。会えた。やっと会えたんだ!」
無意識に近づいてきた雫羽をぎゅっと抱きしめようとしたら、するりと抜けた。
「お互いに幽霊なのに、無理だよ。生きてる間にしたかったけどさ。残念でした」
悲しそうな顔で雫羽は澄矢を見る。澄矢は天を仰ぐ。
「でも、私はこの空間で一緒にいるってだけで幸せだよ。生きてる間は会えもしなかったわけだし、幻想の中の澄矢くんだったから。何か、へんな感覚なんだ。しっかりと見たことなかったけど、こんな顔していたんだね」
左頬にぽつんとほくろが見える。眉毛は少しぼさっとしてて、下唇が厚い。間近でジロジロと見られて、急に恥ずかしくなる澄矢はぐるりと振り返った。
「後ろ向いたら、顔が見られないじゃない。雫羽ちゃんが見てるんだよぉ?」
雫羽はさらに追いかけて、澄矢の顔を覗くとさらにくるりと回って、じゃれ合う犬みたいになっていた。
「いつまでもこんなことできないよ?」
「え?」
「さらに上、登らないとね」
「上?」
その言葉を発したとたん、澄矢の背中に大きな白い翼が現れた。雫羽は背中に見えないように閉まっていたようだ。
無意識の力で翼を大きく広げた。
「澄矢くん、ここから先は時間の感覚も体の感覚もない世界に行くよ。そうだなぁ、心だけの世界。やりたいことしたいこと心の思うままに過ごせるところ。もう私たち生きた世界には戻れない。行けると、したら、生まれ変わるしかできないの。神様が気まぐれだけど、来世で会わせてくれるといいよね」
「来世?」
「そう、生まれ変わるんだよ。新しい私、新しい君。ね、来世を楽しみにしよう」
光輝く真っ白い世界にどんどんと吸い込まれていく。もう後ろには行けない。いや行く必要はない。前しか見えないのだ。
澄矢と雫羽は、煌々と光る白い世界にあっという間に包み込まれていった。
さらに奥には山々が続いている。なんとも自然豊かな場所だ。小鳥たちが優雅に飛び交う。
蝶々たちも色鮮やかな花の蜜を吸って、飛んでいる。なんとも平和な世界だ。
都会の喧騒で生きていると重苦しい空気を感じて生きてるのも嫌になる。
いつの時代も自然豊かな場所は心も豊かにしてくれる。
澄矢は体を起こして、両手を広げて深呼吸をした。
どうしてここにいるかなんて今は考えたくなかった。
過去の記憶は、車に轢かれたことくらいで他は覚えていない。
きっと当たり所が悪くて死んだんだろう。
人間いつ死ぬかわからない。家の中にいてもトラックが飛んできて、命落とす人もいる。
自然の力だと雷にあたるだけでも死んでしまうのだ。
外の世界というものは危険だらけだ。刃物を持った無差別殺人だってどこで発生するかわからない世の中。
それでも生き抜いてきた。車に轢かれて一生を終えたのだ。
生き返ることはできない。
あの時、ああしておけばよかったとか、お金持ちになっておけばよかったとか今はどうすることもできない。
お金は天国に持っていけないし、やり残したことをすることもできない。
草原の上に寝ころんで、手を伸ばして、空に浮かぶ雲をつかもうとした。
つかめるわけないのにとわかっていながら、おかしくなってきた。
すると、見たことある人が顔を覗いて来る。
まつ毛が長く、髪を揺らしていた。白いワンピースの彼女だ。
「澄矢くん、こっち来るの早いよ。まだ呼んでないのに、来てるし」
「雫羽! よかった。会えた。やっと会えたんだ!」
無意識に近づいてきた雫羽をぎゅっと抱きしめようとしたら、するりと抜けた。
「お互いに幽霊なのに、無理だよ。生きてる間にしたかったけどさ。残念でした」
悲しそうな顔で雫羽は澄矢を見る。澄矢は天を仰ぐ。
「でも、私はこの空間で一緒にいるってだけで幸せだよ。生きてる間は会えもしなかったわけだし、幻想の中の澄矢くんだったから。何か、へんな感覚なんだ。しっかりと見たことなかったけど、こんな顔していたんだね」
左頬にぽつんとほくろが見える。眉毛は少しぼさっとしてて、下唇が厚い。間近でジロジロと見られて、急に恥ずかしくなる澄矢はぐるりと振り返った。
「後ろ向いたら、顔が見られないじゃない。雫羽ちゃんが見てるんだよぉ?」
雫羽はさらに追いかけて、澄矢の顔を覗くとさらにくるりと回って、じゃれ合う犬みたいになっていた。
「いつまでもこんなことできないよ?」
「え?」
「さらに上、登らないとね」
「上?」
その言葉を発したとたん、澄矢の背中に大きな白い翼が現れた。雫羽は背中に見えないように閉まっていたようだ。
無意識の力で翼を大きく広げた。
「澄矢くん、ここから先は時間の感覚も体の感覚もない世界に行くよ。そうだなぁ、心だけの世界。やりたいことしたいこと心の思うままに過ごせるところ。もう私たち生きた世界には戻れない。行けると、したら、生まれ変わるしかできないの。神様が気まぐれだけど、来世で会わせてくれるといいよね」
「来世?」
「そう、生まれ変わるんだよ。新しい私、新しい君。ね、来世を楽しみにしよう」
光輝く真っ白い世界にどんどんと吸い込まれていく。もう後ろには行けない。いや行く必要はない。前しか見えないのだ。
澄矢と雫羽は、煌々と光る白い世界にあっという間に包み込まれていった。