パティシエになりたいので、結婚はいたしません！

私が戸惑っていると、女性が目に涙を浮かべて私を抱き締める。そして「よかった。もう目を覚さないかと思ったのよ」と泣き出した。あれ？日本語？言葉がわかる……。

「えっと……」
　
戸惑いながら私が言葉を口にすると、男性がため息を吐きながら「お前は木登りをしていて頭から落ち、気を失っていたんだ。お転婆すぎるぞ」と言う。

「ごめんなさい」

二人のことは全く知らないけど、心配をかけてしまったらしい。謝りながら私は起き上がった。そして目を見開く。全く見覚えのない部屋だった。

お姫様の部屋のようなロココ調の家具が並んだ部屋はとっても可愛い。そして部屋にある鏡に映った自分の姿を見た時、私は「誰？」と言ってしまいそうになった。

銀色の長い髪に緑の目。とっても可愛い十歳くらいの女の子がいた。びっくりしている私に男性が言う。

「アン、お前は伯爵家の一人娘なんだ。そろそろお転婆は卒業してほしいものだな」

これってもしかして、ラノベでよく見る異世界転生では？混乱しつつもそのことだけは理解できた。