パティシエになりたいので、結婚はいたしません!
「私、結婚はしたくありません。パティシエになりたいんです。スイーツをこの世界に誕生させたのは私なんですから」

薄力粉を水とバター、そしてサラダ油を入れた鍋に投入して粉っぽさがなくなるまで混ぜていく。粉っぽさがなくなってももう一度練り混ぜながら生地を弱火で温めなくちゃいけない。でも温めるのは二十秒だけ!温めすぎると卵を加えた時に焼き卵になっちゃうからね。

「アン、話を聞いてるのか?」

「結婚しろというお話ですよね?私はしません」

「お前がそう言うと思って、四人の婚約者候補を私が決めておいたぞ」

「……今何と?」

シュークリームを作る手を止め、私はお父様の方を見る。お父様はニコニコと嬉しそうに笑いながら、「入ってくれ」と厨房の外に向かって言った。

厨房には不釣り合いな豪華な衣装を纏った同じ貴族の男性が四人、私の目の前に現れる。四人とも美形だ。こういうアニメがあったら多くの女性ファンができるだろう。

「アン・ゴールドスタイン嬢、お会いできて光栄です。私たち四人は隣国のラペーシュから来ました」
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