親愛なる魔王の君へ＃2～召喚されたので、魔王の側近になります！～

「食べる！」

ギルバートさんの問いかけに、僕はパタンと専門書を閉じると、立ち上がった。

「はいはい。準備するから待ってろ。ラウル、紅茶は飲めるか？」

ギルバートさんが、椅子から立ち上がりながら問いかけてくる。

「……ごめん。僕、紅茶は苦手なんだ……口に合わなくて……」

1回だけ父さんが飲んでいて、興味から僕も飲んでみたんだけど……僕の口には合わなかったみたい。

「そうか。なら、いつものお茶でいいか？」

リビングにある戸棚から、ギルバートさんのお母さんからもらったというお菓子を引っ張り出しながら、ギルバートさんは声をかけてきた。

……それが、何だか気を使ってくれているように見える。

「うん。ありがとう」

僕が微笑むと、ギルバートさんは「別に……」と僕から顔を逸らした。

休憩を兼ねて、ギルバートさんと一緒にお菓子を食べていると、ベルが鳴る。ルーチェが来たようだ。

ギルバートさんは、立ち上がるとリビングを出ていった。

僕が無言でお菓子を食べていると、リビングのドアが開いてギルバートさんとルーチェが入ってくる。

「ラウル、おはよう。何か、変なタイミングで来てごめん……」

机の上に置かれたお菓子に目を移して、ルーチェは謝った。

「おはよう。僕は大丈夫だよ」