親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~
男性の後を、僕は慌てて追いかける。不意に、男性が僕の方を向いた。

「……お前、名前は?」

「朝川雨琉です」

僕が名乗ると、男性は「は?」と怪訝そうな顔で僕を見る。

「……?」

僕がどう言っていいのか悩んでいると、男性は「……まぁいい。僕は、ギルバート。ギルバート・アンダーソンだ」と自己紹介をした。

男性――ギルバートさんは、それ以上何も喋らなくなる。

しばらく森の中を歩いていると、開けた場所に出た。そこに、小さな一軒家が立っている。

「ここが、僕の家だ。入れ」

そう言って、ギルバートさんは家の中に入った。僕もギルバートさんの後をついて、中に入る。

ギルバートさんに促されてリビングに入ると、リビングにはたくさんの本が置かれていた。

「本、大量にありますね……」

「まぁな。たまに実家に帰るんだが、その度に両親から大量の本を渡されるんだ。読み終えたから、もらって欲しいってな。捨てる訳には、いかないだろ?」

「そうなんですね。ギルバートさんは、本が好きなんですか?」

「いや、あまり読まないな。どこぞの大魔導師にあげてもいいんだがな。遠いから、行きたくないんだよな」

「……どこぞの大魔導師……?」
< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop