その手で強く、抱きしめて
「い、嫌ッ!!」
直倫に見つかってしまったのかと思った私は掴まれた腕を振り解く為に掴まれていないもう片方の腕で押し退けようとしたものの、今度はその手首を掴まれてしまう。
「お願い! もう逃げないから、殴らないでっ!!」
さっき殴られた事が頭の中に浮かび上がり、目を瞑ったままそう懇願すると、
「俺はそんな事をするつもりは無い。少し落ち着け」
聞こえて来た声は直倫のものでは無く、聞いた事の無い声に安堵しつつ、恐る恐る瞼を開けた。
「誰と勘違いしてるのか知らないが、歩くならきちんと前を見て歩け。落ちるところだったぞ」
「あ……す、すみません……」
目の前には明るめブラウン色の髪を刈り上げたヘアスタイルに少し鋭く見える切れ長の目が印象的な男の人が立っていて、川の方に視線を移しながら、私が落ちそうになっていた事を教えてくれた。
歩いている最中全く周りを気にしていなかったからいつの間にか川の側まで来てしまっていたようで、彼が止めてくれなかったらそのまま川の中に落ちているところだった。
「あ、ありがとうございます……」
掴まれていた腕と手首が解放された事で彼から少し距離を取った私は、気まずくなって視線を外したままお礼を口にする。
「いや、それは別に構わないが……お前、困っている事があるんじゃないのか?」
「い、いえ、そんな事ないです、失礼します」
私がさっき直倫だと勘違いして言い放った言葉を気にしての事だろう。男の人は困っている事があるのではと尋ねてくるけど、見知らぬ人に話せる内容でも無いからはぐらかしてこの場から立ち去ろうとすると、
「その頬、誰かに殴られたんだろ? その、俺で良ければ力になるから、話してみないか?」
触れていい話題か悩んでの事なのか、少し遠慮がちに声を掛けてきてくれた。
直倫に見つかってしまったのかと思った私は掴まれた腕を振り解く為に掴まれていないもう片方の腕で押し退けようとしたものの、今度はその手首を掴まれてしまう。
「お願い! もう逃げないから、殴らないでっ!!」
さっき殴られた事が頭の中に浮かび上がり、目を瞑ったままそう懇願すると、
「俺はそんな事をするつもりは無い。少し落ち着け」
聞こえて来た声は直倫のものでは無く、聞いた事の無い声に安堵しつつ、恐る恐る瞼を開けた。
「誰と勘違いしてるのか知らないが、歩くならきちんと前を見て歩け。落ちるところだったぞ」
「あ……す、すみません……」
目の前には明るめブラウン色の髪を刈り上げたヘアスタイルに少し鋭く見える切れ長の目が印象的な男の人が立っていて、川の方に視線を移しながら、私が落ちそうになっていた事を教えてくれた。
歩いている最中全く周りを気にしていなかったからいつの間にか川の側まで来てしまっていたようで、彼が止めてくれなかったらそのまま川の中に落ちているところだった。
「あ、ありがとうございます……」
掴まれていた腕と手首が解放された事で彼から少し距離を取った私は、気まずくなって視線を外したままお礼を口にする。
「いや、それは別に構わないが……お前、困っている事があるんじゃないのか?」
「い、いえ、そんな事ないです、失礼します」
私がさっき直倫だと勘違いして言い放った言葉を気にしての事だろう。男の人は困っている事があるのではと尋ねてくるけど、見知らぬ人に話せる内容でも無いからはぐらかしてこの場から立ち去ろうとすると、
「その頬、誰かに殴られたんだろ? その、俺で良ければ力になるから、話してみないか?」
触れていい話題か悩んでの事なのか、少し遠慮がちに声を掛けてきてくれた。