その手で強く、抱きしめて
「……で、でも……」
見知らぬ私相手に優しい言葉を掛けてくれた彼が救世主のように思えた。
だけど、今会ったばかりの人に話せる程軽い内容では無いし、巻き込む訳にもいかない。
そう思っていたのに――
「殴ったのは男なんだろ?」
「……はい」
「彼氏……なのか?」
「いえ……その、元カレ……です」
「そうか。まあ何にしても女に手を上げるような男は最低だ。そんな最低な男の為に悩む必要も苦しむ事も無いと俺は思う。見ず知らずの俺に話しにくいかもしれないが、このまま今のアンタを放っておく事は出来ない。必ず助けになるから、俺を頼ってみないか?」
彼が私を放っておけない、助けになるから頼ってみないかと言ってくれたので、
「……すみません、ありがとうございます……本当はどうすればいいか分からなくて困ってて……、迷惑掛けてしまうって分かっているけど……でも、お願いします、助けてください……っ」
切羽詰まった状況でどうすればいいか分からなかった私は申し訳無いと思いながらも、差し伸べられた手を取っていた。
「とりあえず、場所を変えるか。話はそこで聞く」
「は、はい……」
「そう言えば、まだ名を名乗って無かったな。俺は神坂 眞弘。菓子メーカーKAMISAKAの代表取締役社長を務めている」
「え? あの大手菓子メーカーの?」
「まあ、俺は前社長の孫という立場で成り上がっただけで、KAMISAKAの名を広めたのは祖父だがな」
「そう、なんですね……あの、私は五條 綺咲と言います……その、本当に頼ってしまってもいいのでしょうか? 神坂さんや、下手をすれば会社にまでご迷惑をお掛けしてしまうかもしれないのに……」
「問題無い。それと、眞弘でいい。俺も綺咲と呼ばせてもらうから。ひとまず俺の自宅に向かうが、それでいいか?」
「……は、はい……よろしくお願いします」
助けてくれた彼はまさかの大手菓子メーカーの社長さん。
いくら放っておけないと言われたからといえど本当に頼ってしまっていいのか悩むところだけど、ここで彼に頼らなかったらどうすればいいのか分からなかった私は手を差し伸べてくれた優しい彼に甘えるしか無かった。
見知らぬ私相手に優しい言葉を掛けてくれた彼が救世主のように思えた。
だけど、今会ったばかりの人に話せる程軽い内容では無いし、巻き込む訳にもいかない。
そう思っていたのに――
「殴ったのは男なんだろ?」
「……はい」
「彼氏……なのか?」
「いえ……その、元カレ……です」
「そうか。まあ何にしても女に手を上げるような男は最低だ。そんな最低な男の為に悩む必要も苦しむ事も無いと俺は思う。見ず知らずの俺に話しにくいかもしれないが、このまま今のアンタを放っておく事は出来ない。必ず助けになるから、俺を頼ってみないか?」
彼が私を放っておけない、助けになるから頼ってみないかと言ってくれたので、
「……すみません、ありがとうございます……本当はどうすればいいか分からなくて困ってて……、迷惑掛けてしまうって分かっているけど……でも、お願いします、助けてください……っ」
切羽詰まった状況でどうすればいいか分からなかった私は申し訳無いと思いながらも、差し伸べられた手を取っていた。
「とりあえず、場所を変えるか。話はそこで聞く」
「は、はい……」
「そう言えば、まだ名を名乗って無かったな。俺は神坂 眞弘。菓子メーカーKAMISAKAの代表取締役社長を務めている」
「え? あの大手菓子メーカーの?」
「まあ、俺は前社長の孫という立場で成り上がっただけで、KAMISAKAの名を広めたのは祖父だがな」
「そう、なんですね……あの、私は五條 綺咲と言います……その、本当に頼ってしまってもいいのでしょうか? 神坂さんや、下手をすれば会社にまでご迷惑をお掛けしてしまうかもしれないのに……」
「問題無い。それと、眞弘でいい。俺も綺咲と呼ばせてもらうから。ひとまず俺の自宅に向かうが、それでいいか?」
「……は、はい……よろしくお願いします」
助けてくれた彼はまさかの大手菓子メーカーの社長さん。
いくら放っておけないと言われたからといえど本当に頼ってしまっていいのか悩むところだけど、ここで彼に頼らなかったらどうすればいいのか分からなかった私は手を差し伸べてくれた優しい彼に甘えるしか無かった。