その手で強く、抱きしめて
買い出しに向かう車の中、私は気になっていた事を眞弘さんに尋ねてみた。
「あの、眞弘さん」
「何だ?」
「どうして……今日出逢ったばかりの私に、こんなにも優しくしてくれるんですか?」
何故、見ず知らずの私を助けてくれたのか、そして、優しくしてくれるのかを。
「綺咲を見掛けたのは、偶然だった。用があってたまたま歩いていたところに、何かから逃げるように走り去るお前を見つけた。その表情は切羽詰まっているように見えたから気になって後を追った。そして河川敷に着いて少しお前がホッとした表情を浮かべたからそのまま様子を窺っていたら、どんどん川の方へ向かって歩いて行くから声を掛けたんだ」
「そう、だったんですか……」
「そこで頬が腫れている事やお前の言動から逃げていた理由が分かった。元恋人がストーカー気質だって言うんだ。流石に見て見ぬふりは出来ねぇよ」
「そうだとしても……ここまでしてもらえる理由には足りない気が……」
「俺はな、女に手を上げる男は許せねぇんだ。同じ男として、そういう奴を見たり話を聞くだけでも反吐が出る。そして、その被害に遭っている人間の事は、出来る限り助けてやりたいとも思っている。俺の会社にも、綺咲のような被害を受けた女性社員が居るから、お前の事も放っておけなかった。迷惑だったか?」
「いえ、そんな事ないです! 本当に、助かってます」
「そうか、それならいい。とにかく、今日から一緒に生活するんだ、あまり堅苦しく考えるな。すぐには無理かもしれねぇが、俺の事は家族のような存在だと思って接してくれ。困った事があったらとにかく遠慮はするな。家族は助け合うものだと、俺は思っているからな」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
正直、まだ多少腑に落ちない事はあるけれど、
とにかく眞弘さんは優しい人で、今の私には無くてはならない存在である事は確かなので、今は彼の厚意に甘える事にした。
だけど、後に私は知る事になる。
彼が何故、私を放っておけなかったのかという理由が他にもある事を――。
「あの、眞弘さん」
「何だ?」
「どうして……今日出逢ったばかりの私に、こんなにも優しくしてくれるんですか?」
何故、見ず知らずの私を助けてくれたのか、そして、優しくしてくれるのかを。
「綺咲を見掛けたのは、偶然だった。用があってたまたま歩いていたところに、何かから逃げるように走り去るお前を見つけた。その表情は切羽詰まっているように見えたから気になって後を追った。そして河川敷に着いて少しお前がホッとした表情を浮かべたからそのまま様子を窺っていたら、どんどん川の方へ向かって歩いて行くから声を掛けたんだ」
「そう、だったんですか……」
「そこで頬が腫れている事やお前の言動から逃げていた理由が分かった。元恋人がストーカー気質だって言うんだ。流石に見て見ぬふりは出来ねぇよ」
「そうだとしても……ここまでしてもらえる理由には足りない気が……」
「俺はな、女に手を上げる男は許せねぇんだ。同じ男として、そういう奴を見たり話を聞くだけでも反吐が出る。そして、その被害に遭っている人間の事は、出来る限り助けてやりたいとも思っている。俺の会社にも、綺咲のような被害を受けた女性社員が居るから、お前の事も放っておけなかった。迷惑だったか?」
「いえ、そんな事ないです! 本当に、助かってます」
「そうか、それならいい。とにかく、今日から一緒に生活するんだ、あまり堅苦しく考えるな。すぐには無理かもしれねぇが、俺の事は家族のような存在だと思って接してくれ。困った事があったらとにかく遠慮はするな。家族は助け合うものだと、俺は思っているからな」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
正直、まだ多少腑に落ちない事はあるけれど、
とにかく眞弘さんは優しい人で、今の私には無くてはならない存在である事は確かなので、今は彼の厚意に甘える事にした。
だけど、後に私は知る事になる。
彼が何故、私を放っておけなかったのかという理由が他にもある事を――。