その手で強く、抱きしめて
「綺咲?」
「……直倫……」
給料日の仕事終わり、春も終わりに近付いてそろそろ夏服が欲しくなった私は久しぶりに買い物でもしようと駅ビルに立ち寄っていた。
そんな帰りの事、ビルを出て駅のホームへ向かって歩いている最中、偶然直倫と鉢合わせた。
浮気した挙句に向こうから振ったくせに、それすらも忘れているのか普通に声掛けてくる辺り信じられないし、無神経にも程があると思った。
それでも、事を荒立てたく無かった私は怒りやモヤモヤを我慢して作り笑顔を浮かべながら、「久しぶりだね」と一言口にした。
その時は軽く世間話をした程度で別れたのだけど、それから数日が経った頃、友達から《直倫くんとヨリを戻したがってるって本当なの?》という不可解なメッセージが送られて来た事で、平穏だった私の日常生活は音を立てて崩れていったのだ。
その友達は直倫とSNSで繋がりがあって、話によると直倫が私と再会した事を書いていた他、その際にヨリを戻したがっているようだったとか有りもしないデタラメを書いていたというもの。
私が浮気されて捨てられた事を知っている子だったから不思議に思いメッセージをくれたみたいで、それを聞いた私はすぐさま友達から直倫のアカウントを教えてもらって抗議のメッセージを送ったのだけど……それは全くの逆効果へとなってしまう。
私からメッセージを送った事で更にデタラメを書いていく直倫。
その内容に反論してみたものの類は友を呼ぶという言葉は侮れないようで、直倫のフォロワーの殆どが皆私の言う事よりも直倫の話を信じてしまっている状況だった。
何を言っても無駄、どうせ嘘なのだから構わなければいいし、その内飽きるだろう。
そう悟った私はSNSのアカウントを削除して再び直倫との関わりを絶った。
だけど、この問題はそんなに単純なものでは無かったのだ。
飽きるどころか直倫の行動はエスカレートしていく。
「……直倫……」
給料日の仕事終わり、春も終わりに近付いてそろそろ夏服が欲しくなった私は久しぶりに買い物でもしようと駅ビルに立ち寄っていた。
そんな帰りの事、ビルを出て駅のホームへ向かって歩いている最中、偶然直倫と鉢合わせた。
浮気した挙句に向こうから振ったくせに、それすらも忘れているのか普通に声掛けてくる辺り信じられないし、無神経にも程があると思った。
それでも、事を荒立てたく無かった私は怒りやモヤモヤを我慢して作り笑顔を浮かべながら、「久しぶりだね」と一言口にした。
その時は軽く世間話をした程度で別れたのだけど、それから数日が経った頃、友達から《直倫くんとヨリを戻したがってるって本当なの?》という不可解なメッセージが送られて来た事で、平穏だった私の日常生活は音を立てて崩れていったのだ。
その友達は直倫とSNSで繋がりがあって、話によると直倫が私と再会した事を書いていた他、その際にヨリを戻したがっているようだったとか有りもしないデタラメを書いていたというもの。
私が浮気されて捨てられた事を知っている子だったから不思議に思いメッセージをくれたみたいで、それを聞いた私はすぐさま友達から直倫のアカウントを教えてもらって抗議のメッセージを送ったのだけど……それは全くの逆効果へとなってしまう。
私からメッセージを送った事で更にデタラメを書いていく直倫。
その内容に反論してみたものの類は友を呼ぶという言葉は侮れないようで、直倫のフォロワーの殆どが皆私の言う事よりも直倫の話を信じてしまっている状況だった。
何を言っても無駄、どうせ嘘なのだから構わなければいいし、その内飽きるだろう。
そう悟った私はSNSのアカウントを削除して再び直倫との関わりを絶った。
だけど、この問題はそんなに単純なものでは無かったのだ。
飽きるどころか直倫の行動はエスカレートしていく。