その手で強く、抱きしめて
(眞弘さんに、相談した方がいいかな……)
只でさえ迷惑を掛けているのに自分勝手に行動してこれ以上面倒な事態に陥っても困ると思った私は母親以外には新たな連絡先を教えず一旦スマホをポケットにしまうと気分を変える為一階に降り、それからはトヨさんを手伝って料理をしたり、眞弘さんの昔話を聞いたりして楽しいひと時を過ごしていた。
そして夕方、眞弘さんが梶原さんと共に自宅へ帰ってくると、
「綺咲、変わった事は無かったか?」
一目散に私の元へやって来て心配してくれた。
「はい。家の中では特に何も……ただ、ちょっと相談したい事がありまして……」
「分かった。それじゃあひとまず着替えてくる。龍登、お前はトヨさんと買い出しにでも行ってきてくれ」
「はい、畏まりました」
私が相談事があると言うと、梶原さんとトヨさんに出掛けるよう言いつけて一旦自室へ行ってしまう。
「それでは綺咲様、私は祖母と買い出しに行って参りますので、眞弘様にお茶の御用意を宜しくお願い致しますね」
「は、はい。分かりました」
そして、二人を見送った私は言われた通りコーヒーの準備を整え、眞弘さんがリビングへ降りてくるのを待った。
「――それで、相談というのは?」
「はい、実は……これなんです……」
「これは?」
「元カレの、SNSアカウントなんですが……内容が少し、困った事になっていて……」
眞弘さんがリビングへ戻って来てソファーに座るとすぐに問い掛けて来てくれたので、私は昼間見た直倫のSNSアカウントを開いてそこに記されている数々の呟きを見てもらう。
「……やはり、アパートに住み続けなくて正解だったな」
「はい……」
「綺咲、お前はSNSでもコイツと繋がっているのか?」
「いえ、今はログインせずに開いている状態です。その、以前にもない事を書かれていたので、今はどうなのか気になって……」
「まあ、奴の動向を探るのには良い手だな。だが、お前はもう見なくていい。見ても嫌な気持ちになるだけだろう? 今後これは俺の方で確認しておく」
「分かりました、ありがとうございます」
「それで、他に心配事は?」
「その、友人に新しい連絡先を教えて良いものか、悩んでて……。それというのも友人の中には間接的にですが元カレと繋がりのある人がいたりするものですから……」
「そうだな……そういう状況であれば、出来れば教えない方が安全だが、そうもいかないだろう。番号は教えてもいい。ただ、住まいや新たな職場などの詳しい情報は教えるな。これはお前の身を守る為だ。分かってくれるな?」
「はい、勿論です」
結局、新しい番号のみを教えるという事で話はつき、番号も聞かれても直接人には教えないようにと念を押した。
そして、友人を信用していない訳じゃ無いけど、つい口を滑らせたりという事も無いとは言い切れない事から、直倫の件がきちんと片付くまでは自分から連絡を取らないようにしようと心に決めたのだった。
只でさえ迷惑を掛けているのに自分勝手に行動してこれ以上面倒な事態に陥っても困ると思った私は母親以外には新たな連絡先を教えず一旦スマホをポケットにしまうと気分を変える為一階に降り、それからはトヨさんを手伝って料理をしたり、眞弘さんの昔話を聞いたりして楽しいひと時を過ごしていた。
そして夕方、眞弘さんが梶原さんと共に自宅へ帰ってくると、
「綺咲、変わった事は無かったか?」
一目散に私の元へやって来て心配してくれた。
「はい。家の中では特に何も……ただ、ちょっと相談したい事がありまして……」
「分かった。それじゃあひとまず着替えてくる。龍登、お前はトヨさんと買い出しにでも行ってきてくれ」
「はい、畏まりました」
私が相談事があると言うと、梶原さんとトヨさんに出掛けるよう言いつけて一旦自室へ行ってしまう。
「それでは綺咲様、私は祖母と買い出しに行って参りますので、眞弘様にお茶の御用意を宜しくお願い致しますね」
「は、はい。分かりました」
そして、二人を見送った私は言われた通りコーヒーの準備を整え、眞弘さんがリビングへ降りてくるのを待った。
「――それで、相談というのは?」
「はい、実は……これなんです……」
「これは?」
「元カレの、SNSアカウントなんですが……内容が少し、困った事になっていて……」
眞弘さんがリビングへ戻って来てソファーに座るとすぐに問い掛けて来てくれたので、私は昼間見た直倫のSNSアカウントを開いてそこに記されている数々の呟きを見てもらう。
「……やはり、アパートに住み続けなくて正解だったな」
「はい……」
「綺咲、お前はSNSでもコイツと繋がっているのか?」
「いえ、今はログインせずに開いている状態です。その、以前にもない事を書かれていたので、今はどうなのか気になって……」
「まあ、奴の動向を探るのには良い手だな。だが、お前はもう見なくていい。見ても嫌な気持ちになるだけだろう? 今後これは俺の方で確認しておく」
「分かりました、ありがとうございます」
「それで、他に心配事は?」
「その、友人に新しい連絡先を教えて良いものか、悩んでて……。それというのも友人の中には間接的にですが元カレと繋がりのある人がいたりするものですから……」
「そうだな……そういう状況であれば、出来れば教えない方が安全だが、そうもいかないだろう。番号は教えてもいい。ただ、住まいや新たな職場などの詳しい情報は教えるな。これはお前の身を守る為だ。分かってくれるな?」
「はい、勿論です」
結局、新しい番号のみを教えるという事で話はつき、番号も聞かれても直接人には教えないようにと念を押した。
そして、友人を信用していない訳じゃ無いけど、つい口を滑らせたりという事も無いとは言い切れない事から、直倫の件がきちんと片付くまでは自分から連絡を取らないようにしようと心に決めたのだった。