その手で強く、抱きしめて
「……顔馴染み……、そうなんですね」
「ごめんなさいね、いきなり話に割り込んじゃって」

 運んで来た料理をテーブルに並べながら話に割り込んだ事を申し訳無さそうに謝る皐月さん。

「いえ、大丈夫ですよ、気にしないでください」

 眞弘さんの代わりに答えてくれただけなのだから特に気にしていない事を伝えると、

「良かった。それじゃあ、ごゆっくり」

 ニコッと笑顔を浮かべて厨房へ戻って行った。

「まあ、アイツは幼馴染みのような兄妹のような関係だな。年齢も二つしか変わらねぇから」
「そうなんですね」
「このカフェは皐月の祖母が始めて、今は皐月が後を継ぎたいと手伝っている。売り上げに貢献してくれと頼まれてな、月に二度くらいは顔を見せに来てるって訳だ」

 眞弘さんと皐月さんの関係性が分かって少しホッとした私はようやく料理に手を付ける。

 オムライスを一口食べて「美味しい」と感想を口にしながらふと、私は何故、眞弘さんと皐月さんが親しげだった事が気になったのだろうと考える。

(……私、眞弘さんの事、気になってる?)

 まだ会ってからそう日数も経っていないけれど、窮地に追い込まれていた所を助けてもらい、住まいも提供してくれて、休みの日はこうして気遣ってくれる。

 そんな優しい眞弘さんに惹かれる事もあるかもしれないけど、何ていうか、そういうのとは少し違うような気がした。

(好きとか、そういうのじゃなくて、私に見せる表情とは違っていたから、気になった……のかな)

 自分の事なのによく分からない感情に少し戸惑いつつも、料理を食べながら眞弘さんとのひと時を楽しんだ。

 そして、カフェを後にした私たちは海辺を少し散策した後で公園の駐車場に戻ると、車の中で眞弘さんから直倫についての話を聞かされた。
< 25 / 44 >

この作品をシェア

pagetop