その手で強く、抱きしめて
「……もしもし、藍華?」
呼び掛けてみるけど、何の反応も無い。
電話に出てから気付いたけれど、今の時間藍華は仕事中のはずだ。
有給を取って休みの可能性もあるけど、それにしても何も答えないのは不自然だ。
「もしもし?」
怪しみながらもう一度問い掛けると、
『何勝手に番号変えてんだよ、綺咲』
藍華ではなくて、何故か直倫が答えた。
「な、何で……、その番号は藍華のじゃ」
「ああ、なかなかお前と会えないからさぁ、お前の友達に協力してもらったんだよ」
「協力? もしかして、藍華に何かしたの!?」
「さあな? 気になるなら確かめに来いよ。俺の部屋で待ってるからさ」
直倫のその言葉に、私は全身から血の気が引いていくのを感じていく。
(藍華は、直倫に捕まってるの? 家に、監禁されてる?)
確かではないけれど、藍華の電話から直倫が掛けてきたという事は、何かがあったという事に違いない。
「綺咲、お前今どこにいんだよ? 仕事も辞めてアパートも引き払って……男がいるのかよ? なあ?」
「……そんなの、直倫には関係ない……」
「そんな態度でいいのか? 友達がどうなってもいいのかよ?」
「……っ、止めて! お願いだから、止めて! 分かった、会いに行くから、だから……」
「それならすぐに来いよ。いいか? 誰にも言わずに一人で来いよ」
それだけ言うと直倫は電話を切ってしまう。
(どうしよう、会いに行くとは言ったけど、勝手に家を出るなって眞弘さんに言われてる……でも、一人で来いって……)
直倫の指示通り内緒で家を抜け出して一人で行くべきか、眞弘さんに相談するべきか悩みに悩んだ私は藍華の事を考えて一人で向かう事に決めた。
トヨさんが庭の掃除をしていたので裏口からこっそり抜け出した私は駅へと向かって走って行く。
駅に着いて切符を買おうとしていた、その時――
「何してるんだ、綺咲」
その声と共に後ろから腕を掴まれた私が振り返ると、そこには、
「眞弘さん……」
怒りを露わにした眞弘さんが立っていた。
呼び掛けてみるけど、何の反応も無い。
電話に出てから気付いたけれど、今の時間藍華は仕事中のはずだ。
有給を取って休みの可能性もあるけど、それにしても何も答えないのは不自然だ。
「もしもし?」
怪しみながらもう一度問い掛けると、
『何勝手に番号変えてんだよ、綺咲』
藍華ではなくて、何故か直倫が答えた。
「な、何で……、その番号は藍華のじゃ」
「ああ、なかなかお前と会えないからさぁ、お前の友達に協力してもらったんだよ」
「協力? もしかして、藍華に何かしたの!?」
「さあな? 気になるなら確かめに来いよ。俺の部屋で待ってるからさ」
直倫のその言葉に、私は全身から血の気が引いていくのを感じていく。
(藍華は、直倫に捕まってるの? 家に、監禁されてる?)
確かではないけれど、藍華の電話から直倫が掛けてきたという事は、何かがあったという事に違いない。
「綺咲、お前今どこにいんだよ? 仕事も辞めてアパートも引き払って……男がいるのかよ? なあ?」
「……そんなの、直倫には関係ない……」
「そんな態度でいいのか? 友達がどうなってもいいのかよ?」
「……っ、止めて! お願いだから、止めて! 分かった、会いに行くから、だから……」
「それならすぐに来いよ。いいか? 誰にも言わずに一人で来いよ」
それだけ言うと直倫は電話を切ってしまう。
(どうしよう、会いに行くとは言ったけど、勝手に家を出るなって眞弘さんに言われてる……でも、一人で来いって……)
直倫の指示通り内緒で家を抜け出して一人で行くべきか、眞弘さんに相談するべきか悩みに悩んだ私は藍華の事を考えて一人で向かう事に決めた。
トヨさんが庭の掃除をしていたので裏口からこっそり抜け出した私は駅へと向かって走って行く。
駅に着いて切符を買おうとしていた、その時――
「何してるんだ、綺咲」
その声と共に後ろから腕を掴まれた私が振り返ると、そこには、
「眞弘さん……」
怒りを露わにした眞弘さんが立っていた。