その手で強く、抱きしめて
結局あの写真の人が誰なのか知る事が無いまま日にちだけが過ぎていく中、平日のある日の事、朝起きると既に眞弘さんの姿が無くて不思議に思っているも、トヨさんも梶原さんもその事には一切触れずにいつも通りだった事が凄く気になった。
朝食を終えていつも通り会社に向かう為に梶原さんの運転する車に乗り込んだ私は、彼と二人になったところで眞弘さんの所在を聞いてみた。
「あの、梶原さん。眞弘さんはどうなさったのですか? 朝から姿がお見えにならないみたいですが……」
「眞弘様は本日用がありまして、朝早くからお出掛けになられました」
「仕事でという事ですか?」
「いえ、あくまでもプライベートな事です」
平日に朝から仕事以外の用事で出掛けたという眞弘さん。
何だか酷く胸騒ぎがした私は、いけないと思いつつももう少し踏み込んだ質問を梶原さんに投げ掛けてみた。
「……それってもしかして、眞弘さんの過去の恋人に、関係のある事なんでしょうか?」
「いえ、詳しい事は私にも分かりません。あくまでも眞弘さんのプライベートな事ですので」
梶原さんはすぐに否定したけど、私は見逃さなかった。ほんの一瞬、彼の瞳が揺れたのを。
(やっぱり、あの女の人絡みで何かあるんだ。会社を休んでまで、会いに行ったのかな? ヨリを戻す為に……?)
恐らく眞弘さんが例の女の人に会いに行った……そんな確信は持てたものの、それ以上の詮索をする事は難しくてこの場では納得して話を切り上げた。
そして、一日仕事を終えて帰宅すると、眞弘さんは既に帰って来ていたようだけど部屋に居るのか姿が見えないので、彼の部屋のドアをノックしてみた。
「眞弘さん、只今帰りました。あの、少しお話したい事があるのですが、いいでしょうか?」
すぐに応答が無かったのでもしかしたら眠っているのかもと思い諦めて自室へ向かい掛けた、その時、
「――入って来てくれて構わない」
「……それじゃあ、失礼します」
どこか声のトーンも下がり気味で明らかに元気の無さそうな眞弘さんの声が中から聞こえて来た私は一瞬戸惑いつつも、ドアを開けて中へ入る事にした。
朝食を終えていつも通り会社に向かう為に梶原さんの運転する車に乗り込んだ私は、彼と二人になったところで眞弘さんの所在を聞いてみた。
「あの、梶原さん。眞弘さんはどうなさったのですか? 朝から姿がお見えにならないみたいですが……」
「眞弘様は本日用がありまして、朝早くからお出掛けになられました」
「仕事でという事ですか?」
「いえ、あくまでもプライベートな事です」
平日に朝から仕事以外の用事で出掛けたという眞弘さん。
何だか酷く胸騒ぎがした私は、いけないと思いつつももう少し踏み込んだ質問を梶原さんに投げ掛けてみた。
「……それってもしかして、眞弘さんの過去の恋人に、関係のある事なんでしょうか?」
「いえ、詳しい事は私にも分かりません。あくまでも眞弘さんのプライベートな事ですので」
梶原さんはすぐに否定したけど、私は見逃さなかった。ほんの一瞬、彼の瞳が揺れたのを。
(やっぱり、あの女の人絡みで何かあるんだ。会社を休んでまで、会いに行ったのかな? ヨリを戻す為に……?)
恐らく眞弘さんが例の女の人に会いに行った……そんな確信は持てたものの、それ以上の詮索をする事は難しくてこの場では納得して話を切り上げた。
そして、一日仕事を終えて帰宅すると、眞弘さんは既に帰って来ていたようだけど部屋に居るのか姿が見えないので、彼の部屋のドアをノックしてみた。
「眞弘さん、只今帰りました。あの、少しお話したい事があるのですが、いいでしょうか?」
すぐに応答が無かったのでもしかしたら眠っているのかもと思い諦めて自室へ向かい掛けた、その時、
「――入って来てくれて構わない」
「……それじゃあ、失礼します」
どこか声のトーンも下がり気味で明らかに元気の無さそうな眞弘さんの声が中から聞こえて来た私は一瞬戸惑いつつも、ドアを開けて中へ入る事にした。