その手で強く、抱きしめて
《直接話したい》

 メッセージが一通、送り主は勿論直倫からで、いつになく簡潔な文章が綴られていた。

(どういうつもりなんだろ……)

 直接なんて冗談じゃない。こっちは顔も見たくないっていうのに。

《いい加減にして。私は話したい事も無いし、強いて言うなら毎日何通もメッセージを送られたり、待ち伏せみたくされるのも嫌なの》

 流石に我慢出来なくなった私は思いの全てを吐き出すように返事を返すと、《それじゃあ、今回直接話す機会をくれたら、これまでの行動を今後色々改める》という内容の返信が来た。

 果たしてそれは本当なのか。それとも嘘なのか。

 疑う気持ちは拭えないけど、話をしてこれまでの行いを改めてくれるというのならそれが一番良い解決作だと思った。

 不安はあるけど、人の多い場所で会えば逃げ場もあると考えた私は、《分かった。それじゃあ土曜の昼間、駅前にあるカフェで会おう。だから、その日まではメッセージも送らない、待ち伏せとかもしないって約束して?》と条件を付けて直接話す事を了承すると、意外にもすんなり条件を受け入れてくれた直倫。

 土曜日は明後日だけど、それまでメッセージ攻撃や監視から解放されると思った私はそれだけで嬉しくなり、ついつい浮かれてしまっていた。
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