虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
2-12 プライドの高い女
「ほら、言われた通り金貨を持ってきたわよ」
カサンドラは金貨を私の机の上に置いた。それを手に取り、じっくり吟味する。
「ちょっと……一体何をそんなにジロジロ見てるのよ」
カサンドラは腕組みをしながら尋ねてきた。
「ええ。貴女が偽物の金貨を持って来ていなか確認しているだけよ」
その言葉にカサンドラはカッときたのだろう。
「何ですって? 私が偽物を持って来たとでも言いたいの?」
「そうは言っていないけど念には念を入れてね……。最近町では銀貨に金メッキを貼っただけの偽金貨が出回っているそうだから」
私は出まかせを言った。
「え? そうなの?」
「ええ、そうよ」
どうせカサンドラは馬鹿だから私の話を鵜呑みにしたに決まっている。よし、どうやら金貨は本物のようだ。
「本物の様ね……さて、それじゃあなた達、私にお茶とお菓子を持って来て頂戴」
私はカサンドラ付きの2人のメイドに命じた。
「
「何ですって!?」
カサンドラの顔が青ざめる。
「お断り致します!」
「私たちはカサンドラ様付きのメイドですっ!」
2人のメイドは口々に反論する。思った通りの反応だ。
「あら、そう。なら宿題はやらないわ」
「ふざけないでよ! 今金貨を渡したでしょう!? この泥棒猫めっ!」
カサンドラは自分の方こそ猫の様に目を吊り上げた。
「なら金貨はいらないわ。返すわよ。だけどいいの?」
私はジロリとカサンドラを見た。
「な、何がいいのよ…?」
「どうせ貴女は試験だって受けてもまともに点数を取れないでしょう? それなら日々の宿題で成績の内申点を上げるしかないんじゃないの? しかも古典語は難しいわ。私なら完璧に現代文に直す事が出来るけど、はっきり言ってカサンドラじゃ無理でしょう? まあ落第しても構わないならいいんだけど?」
私はカサンドラが投げてよこした教科書2冊をスッと机の端に移動させ、宿題をやる意思の無い事を示した。
「く……っ!」
カサンドラは顔を真っ赤にして震えているが…やがてメイドたちに命じた。
「貴女達。このライザの為に……お茶を用意して頂戴……」
「分かりました……」
「すぐにご用意致します」
部屋から立去ろうとした2人のメイドに私は声をかけた。
「あ、貴女達。お茶とお菓子は王室御用達の物にして頂戴ね」
「「!」」
メイド達はギョッとした顔を見せた。
「な、何て図々しい……っ!」
カサンドラが私を睨み付けた。
「図々しい? 言っておくけど貴女のような女に言われたくは無いわ。今迄ずっと自分の宿題をこの私に無償でさせていたのは何処の誰なの? そんな事を言うなら何もいらないわ。今すぐ私の部屋から出て行って頂戴! せいぜい、学校で先生方に怒られる事ね」
私は金貨を古典語の一番前のページに挟んでカサンドラに差し出した。
「…」
カサンドラは怒りに満ちた目で私を見つめている。
「どうしたの? 教科書受け取らないの? 受け取らないなら捨てるわよ?」
「お、覚えていなさいよっ!」
カサンドラは私から教科書を引ったくるように奪うと、メイドを引き連れて出て行き……これ見よがしにバタンとわざと大きな音を立ててドアを閉めていった。
「ふう。ようやく静かになったわ」
ゴロリとベッドに横になると呟いた。作戦は成功だ。元々今日の宿題…は手伝う気など、さらさらなかったのだ。きっと明日カサンドラは泣きついてくるだろう。特に古典語の教師は厳しいらしいので、相当怒られるに決まっている。
「今迄私を虐げてきた罰よ……」
そして私は目を閉じた――
カサンドラは金貨を私の机の上に置いた。それを手に取り、じっくり吟味する。
「ちょっと……一体何をそんなにジロジロ見てるのよ」
カサンドラは腕組みをしながら尋ねてきた。
「ええ。貴女が偽物の金貨を持って来ていなか確認しているだけよ」
その言葉にカサンドラはカッときたのだろう。
「何ですって? 私が偽物を持って来たとでも言いたいの?」
「そうは言っていないけど念には念を入れてね……。最近町では銀貨に金メッキを貼っただけの偽金貨が出回っているそうだから」
私は出まかせを言った。
「え? そうなの?」
「ええ、そうよ」
どうせカサンドラは馬鹿だから私の話を鵜呑みにしたに決まっている。よし、どうやら金貨は本物のようだ。
「本物の様ね……さて、それじゃあなた達、私にお茶とお菓子を持って来て頂戴」
私はカサンドラ付きの2人のメイドに命じた。
「
「何ですって!?」
カサンドラの顔が青ざめる。
「お断り致します!」
「私たちはカサンドラ様付きのメイドですっ!」
2人のメイドは口々に反論する。思った通りの反応だ。
「あら、そう。なら宿題はやらないわ」
「ふざけないでよ! 今金貨を渡したでしょう!? この泥棒猫めっ!」
カサンドラは自分の方こそ猫の様に目を吊り上げた。
「なら金貨はいらないわ。返すわよ。だけどいいの?」
私はジロリとカサンドラを見た。
「な、何がいいのよ…?」
「どうせ貴女は試験だって受けてもまともに点数を取れないでしょう? それなら日々の宿題で成績の内申点を上げるしかないんじゃないの? しかも古典語は難しいわ。私なら完璧に現代文に直す事が出来るけど、はっきり言ってカサンドラじゃ無理でしょう? まあ落第しても構わないならいいんだけど?」
私はカサンドラが投げてよこした教科書2冊をスッと机の端に移動させ、宿題をやる意思の無い事を示した。
「く……っ!」
カサンドラは顔を真っ赤にして震えているが…やがてメイドたちに命じた。
「貴女達。このライザの為に……お茶を用意して頂戴……」
「分かりました……」
「すぐにご用意致します」
部屋から立去ろうとした2人のメイドに私は声をかけた。
「あ、貴女達。お茶とお菓子は王室御用達の物にして頂戴ね」
「「!」」
メイド達はギョッとした顔を見せた。
「な、何て図々しい……っ!」
カサンドラが私を睨み付けた。
「図々しい? 言っておくけど貴女のような女に言われたくは無いわ。今迄ずっと自分の宿題をこの私に無償でさせていたのは何処の誰なの? そんな事を言うなら何もいらないわ。今すぐ私の部屋から出て行って頂戴! せいぜい、学校で先生方に怒られる事ね」
私は金貨を古典語の一番前のページに挟んでカサンドラに差し出した。
「…」
カサンドラは怒りに満ちた目で私を見つめている。
「どうしたの? 教科書受け取らないの? 受け取らないなら捨てるわよ?」
「お、覚えていなさいよっ!」
カサンドラは私から教科書を引ったくるように奪うと、メイドを引き連れて出て行き……これ見よがしにバタンとわざと大きな音を立ててドアを閉めていった。
「ふう。ようやく静かになったわ」
ゴロリとベッドに横になると呟いた。作戦は成功だ。元々今日の宿題…は手伝う気など、さらさらなかったのだ。きっと明日カサンドラは泣きついてくるだろう。特に古典語の教師は厳しいらしいので、相当怒られるに決まっている。
「今迄私を虐げてきた罰よ……」
そして私は目を閉じた――