虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
3-2 気前の良いジュリアン侯爵
今日はジュリアン侯爵と会う約束の日だ。
11時に私は広場のある白いベンチに腰掛けて待っていた。だが広場に足を運んだものの、恐らくジュリアン侯爵は来ないのではないかと考えていた。
あんな立派な方が貧弱な伯爵令嬢と2度も会おうとは思わないはずだ。それに交わした約束だって口約束のみ。恐らくあの時は憐れな私に同情してくれていただけなのだろう。
だからいつものようにここで写生を済ませて12時になったら、パンを買って昼食を取る。14時になったら帰宅するつもりでいた。
私はスケッチをする為に布袋からスケッチブックを広げて色鉛筆を取り出した。
シャッ!シャッ!
紙の上で色鉛筆を走らせながら広場のスケッチをしていると、突然背後から声をかけられた。
「ライザ、待たせてしまったようですね?」
慌てて振り向くと、そこにはニコニコと笑みを浮かべたジュリアン侯爵が立っていた。
「え……? ジュ、ジュリアン様……?」
嘘……まさか本当に来てくれるなんて思いもしていなかった。気付けば私はジュリアン侯爵の顔をじっと眺めていたようだ。
「ライザ? どうされましたか?」
ジュリアン侯爵は不思議そうに首を傾げる。
「い、いえ。まさか本当にここへ来て下さるとは思いもしなかったので。有難うございます」
頭を下げるとジュリアン侯爵は言った。
「当り前ではありませんか。私は貴女と約束をしたのです。それで今もスケッチをされておりましたね? 何枚ほど描かれましたか?」
「はい、丁度10枚描きました。どうぞご覧ください」
私はスケッチブックをジュリアン侯爵に手渡した。
「ありがとう、ライザ」
ジュリアン侯爵は笑みを浮かべると、ペラペラとスケッチブックをめくった。その目は真剣にイラストを見ている。私はまるで試験の合格発表を待つかの如く、ドキドキしながらじっとしていると……。
「素晴らしい!」
ジュリアン侯爵の歓喜の声が上がった。
「いや…まさかこれ程素晴らしい風景画を描く事が出来るとは思いもしておりませんでした。どうでしょう? 全てのイラストを1枚につき金貨2枚でお支払いさせて頂けませんか?」
「え、ええ!? そ、そんな高額で……。こんな色鉛筆画なのに……?」
あまりの申し出に私は眩暈がしてきた。
「いえいえ、本当に素晴らしい作品です。私は今とても感動しています。屋敷に帰ったらすぐに飾りたいと思っておりますよ」
「あ、有難うございます!」
私は深々と頭を下げた。良かった……これでまた一歩、我が家から独立できる夢に一歩近付く事が出来る。
「所でライザ。また一緒にお昼に行きましょう。本日は有名なシーフード料理店へ案内しますよ?」
「まあ、シーフード料理ですか? 美味しそう……」
「おや? ひょっとするとライザはシーフード料理が好きなのですか?」
「はい、大好きです!」
「それは良い事を伺いました。ではすぐに参りましょう。本日は面白いショーも見る事が出来るはずですよ?」
「え? ショーですか? レストランでショーだなんて凄いですね!」
「ええ、その辺の大道芸人のショー等とは比較にならない程面白いショーですよ?」
ジュリアン侯爵は意味深な事を言う。
「では、ライザ。参りましょう。そこのレストランはここから近いので歩いて行ける距離ですよ」
「そうなんですね?」
そして私とジュリアン侯爵は2人並んで、これから面白いショーを見る事が出来るというシーフードレストランへ向かった――
11時に私は広場のある白いベンチに腰掛けて待っていた。だが広場に足を運んだものの、恐らくジュリアン侯爵は来ないのではないかと考えていた。
あんな立派な方が貧弱な伯爵令嬢と2度も会おうとは思わないはずだ。それに交わした約束だって口約束のみ。恐らくあの時は憐れな私に同情してくれていただけなのだろう。
だからいつものようにここで写生を済ませて12時になったら、パンを買って昼食を取る。14時になったら帰宅するつもりでいた。
私はスケッチをする為に布袋からスケッチブックを広げて色鉛筆を取り出した。
シャッ!シャッ!
紙の上で色鉛筆を走らせながら広場のスケッチをしていると、突然背後から声をかけられた。
「ライザ、待たせてしまったようですね?」
慌てて振り向くと、そこにはニコニコと笑みを浮かべたジュリアン侯爵が立っていた。
「え……? ジュ、ジュリアン様……?」
嘘……まさか本当に来てくれるなんて思いもしていなかった。気付けば私はジュリアン侯爵の顔をじっと眺めていたようだ。
「ライザ? どうされましたか?」
ジュリアン侯爵は不思議そうに首を傾げる。
「い、いえ。まさか本当にここへ来て下さるとは思いもしなかったので。有難うございます」
頭を下げるとジュリアン侯爵は言った。
「当り前ではありませんか。私は貴女と約束をしたのです。それで今もスケッチをされておりましたね? 何枚ほど描かれましたか?」
「はい、丁度10枚描きました。どうぞご覧ください」
私はスケッチブックをジュリアン侯爵に手渡した。
「ありがとう、ライザ」
ジュリアン侯爵は笑みを浮かべると、ペラペラとスケッチブックをめくった。その目は真剣にイラストを見ている。私はまるで試験の合格発表を待つかの如く、ドキドキしながらじっとしていると……。
「素晴らしい!」
ジュリアン侯爵の歓喜の声が上がった。
「いや…まさかこれ程素晴らしい風景画を描く事が出来るとは思いもしておりませんでした。どうでしょう? 全てのイラストを1枚につき金貨2枚でお支払いさせて頂けませんか?」
「え、ええ!? そ、そんな高額で……。こんな色鉛筆画なのに……?」
あまりの申し出に私は眩暈がしてきた。
「いえいえ、本当に素晴らしい作品です。私は今とても感動しています。屋敷に帰ったらすぐに飾りたいと思っておりますよ」
「あ、有難うございます!」
私は深々と頭を下げた。良かった……これでまた一歩、我が家から独立できる夢に一歩近付く事が出来る。
「所でライザ。また一緒にお昼に行きましょう。本日は有名なシーフード料理店へ案内しますよ?」
「まあ、シーフード料理ですか? 美味しそう……」
「おや? ひょっとするとライザはシーフード料理が好きなのですか?」
「はい、大好きです!」
「それは良い事を伺いました。ではすぐに参りましょう。本日は面白いショーも見る事が出来るはずですよ?」
「え? ショーですか? レストランでショーだなんて凄いですね!」
「ええ、その辺の大道芸人のショー等とは比較にならない程面白いショーですよ?」
ジュリアン侯爵は意味深な事を言う。
「では、ライザ。参りましょう。そこのレストランはここから近いので歩いて行ける距離ですよ」
「そうなんですね?」
そして私とジュリアン侯爵は2人並んで、これから面白いショーを見る事が出来るというシーフードレストランへ向かった――