虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
3-10 嫌がらせの証拠
ジュリアン侯爵は少しの間、じっとカサンドラを見つめた。
カサンドラは頬を赤く染めてうっとりした目つきでジュリアン侯爵を見つめている。
それとは対称的なのは父の方だった。父は赤ら顔でイライラしながら爪を噛み、カサンドラとジュリアン侯爵を交互に見ている。
本当は一言、モノ申したいのだろうがジュリアン侯爵の方が爵位が上なので、それが出来ないのであろう。
やがてジュリアン侯爵はカサンドラに話しかけた。
「あいにく私は全く貴女に興味がありません。それどころか私の大切なライザに悪意ある嫌がらせを繰り返してきたそうじゃないですか? そうですよね? ライザ」
そして私を見つめると笑みを浮かべた。
「えっ!?」
いきなり話を振られて驚いてジュリアン侯爵を見つめた。するとまるで合図でも送るかのように私に目配せをしてくる。
そこで私は頷いた。
「はい、そうです。ジュリアン様。私は今までカサンドラだけではなく、父にも母にも……この屋敷の使用人たちだけでなく、家庭教師としてこの屋敷に訪れていた人たちにすら、馬鹿にされ続けてきました」
「「「な……っ!」」」
父も母も、カサンドラも私の発言に驚いたのか、一斉に声をそろえて私に注目する。
「ふ、ふざけないでっ! 私がいつ貴女に嫌がらせをしたというの!? 証拠を見せて頂戴!」
カサンドラの滅茶苦茶な言い分に私は呆れてしまった。今までさんざん父や母、そしてカサンドラが私に度重なる嫌がらせや仕打ちをしてきたことはこの屋敷中の誰もが知っていることなのに。いや、彼ら全員が共犯者と言えるのに。
するとジュリアン侯爵は美しい笑みを浮かべた。
「証拠? 証拠でしたらありますよ。今お見せしましょう」
そしてジュリアン侯爵は懐から1枚の写真を取り出すと、テーブルの上に置いた。
それを見たカサンドラの顔が見る見るうちに青ざめていく。何故ならその写真には、渡り廊下を歩いていた私にいきなりこの場にいる2人のメイドがバケツで水を掛けている様が映し出されていたからである。
「こ、これは……」
父は声を震わせてカサンドラを見た。
「そ、そんな……どうしてこんな写真が……」
カサンドラは茫然と写真を眺め、呟く。さらにジュリアン侯爵はカサンドラに追い打ちをかけるた。
「この写真に写っているメイドたちは、どう見ても今ここに立っている2人にしか見えないのですけど? いいですか? この国はいまだに根強く階級制度が残っています。仮にも伯爵令嬢であるライザに、たかがメイドの分際でこのような行為は決して許されるものでは無いこと位、分かりませんか?」
ジュリアン侯爵はカサンドラの背後に立っている2人のメイドに視線を移した。彼女たちは傍目から分かるくらいにガチガチと上下の歯を嚙み合わせながらガタガタ震えている。
「た、確かにこの写真に写りこんでいるメイドは……この2人に違いありませんが、そんなのは私は知りません!」
カサンドラは必死でジュリアン侯爵に訴える。
すると2人のメイドが次々と悲鳴を上げた。
「そんなっ! 私たちはカサンドラ様の為に……っ!」
「そうですっ! 今までもずっと命じてこられたではないですかっ!」
「あ、あんた達……この場で何て事を……っ!」
カサンドラは恐ろしい形相で2人を睨みつけた。父も母も口を挟めないでいる。
「ほら。やはりライザに対する嫌がらせは事実ではありませんか。とにかくそのような女性はお呼びではないのです。理解できたのなら出て行っていただけますか? この場に貴女は不要です」
「く……っ!」
カサンドラは悔しそうに見を翻し、飛びだして行った。
そしてそのあとを追うように2人のメイドが後を追いかけていった――
カサンドラは頬を赤く染めてうっとりした目つきでジュリアン侯爵を見つめている。
それとは対称的なのは父の方だった。父は赤ら顔でイライラしながら爪を噛み、カサンドラとジュリアン侯爵を交互に見ている。
本当は一言、モノ申したいのだろうがジュリアン侯爵の方が爵位が上なので、それが出来ないのであろう。
やがてジュリアン侯爵はカサンドラに話しかけた。
「あいにく私は全く貴女に興味がありません。それどころか私の大切なライザに悪意ある嫌がらせを繰り返してきたそうじゃないですか? そうですよね? ライザ」
そして私を見つめると笑みを浮かべた。
「えっ!?」
いきなり話を振られて驚いてジュリアン侯爵を見つめた。するとまるで合図でも送るかのように私に目配せをしてくる。
そこで私は頷いた。
「はい、そうです。ジュリアン様。私は今までカサンドラだけではなく、父にも母にも……この屋敷の使用人たちだけでなく、家庭教師としてこの屋敷に訪れていた人たちにすら、馬鹿にされ続けてきました」
「「「な……っ!」」」
父も母も、カサンドラも私の発言に驚いたのか、一斉に声をそろえて私に注目する。
「ふ、ふざけないでっ! 私がいつ貴女に嫌がらせをしたというの!? 証拠を見せて頂戴!」
カサンドラの滅茶苦茶な言い分に私は呆れてしまった。今までさんざん父や母、そしてカサンドラが私に度重なる嫌がらせや仕打ちをしてきたことはこの屋敷中の誰もが知っていることなのに。いや、彼ら全員が共犯者と言えるのに。
するとジュリアン侯爵は美しい笑みを浮かべた。
「証拠? 証拠でしたらありますよ。今お見せしましょう」
そしてジュリアン侯爵は懐から1枚の写真を取り出すと、テーブルの上に置いた。
それを見たカサンドラの顔が見る見るうちに青ざめていく。何故ならその写真には、渡り廊下を歩いていた私にいきなりこの場にいる2人のメイドがバケツで水を掛けている様が映し出されていたからである。
「こ、これは……」
父は声を震わせてカサンドラを見た。
「そ、そんな……どうしてこんな写真が……」
カサンドラは茫然と写真を眺め、呟く。さらにジュリアン侯爵はカサンドラに追い打ちをかけるた。
「この写真に写っているメイドたちは、どう見ても今ここに立っている2人にしか見えないのですけど? いいですか? この国はいまだに根強く階級制度が残っています。仮にも伯爵令嬢であるライザに、たかがメイドの分際でこのような行為は決して許されるものでは無いこと位、分かりませんか?」
ジュリアン侯爵はカサンドラの背後に立っている2人のメイドに視線を移した。彼女たちは傍目から分かるくらいにガチガチと上下の歯を嚙み合わせながらガタガタ震えている。
「た、確かにこの写真に写りこんでいるメイドは……この2人に違いありませんが、そんなのは私は知りません!」
カサンドラは必死でジュリアン侯爵に訴える。
すると2人のメイドが次々と悲鳴を上げた。
「そんなっ! 私たちはカサンドラ様の為に……っ!」
「そうですっ! 今までもずっと命じてこられたではないですかっ!」
「あ、あんた達……この場で何て事を……っ!」
カサンドラは恐ろしい形相で2人を睨みつけた。父も母も口を挟めないでいる。
「ほら。やはりライザに対する嫌がらせは事実ではありませんか。とにかくそのような女性はお呼びではないのです。理解できたのなら出て行っていただけますか? この場に貴女は不要です」
「く……っ!」
カサンドラは悔しそうに見を翻し、飛びだして行った。
そしてそのあとを追うように2人のメイドが後を追いかけていった――