虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
4-4 不気味な離れ
カサンドラを見張っている? 一体どういう事なのだろう?
今の状況に思わず笑みが浮かんでしまった。まさかあのカサンドラが父に監禁されているなんて。こんな面白い光景に遭遇できるとは、私は本当にラッキーだ。
すると見張りのフットマンは私の笑みに気づいたのか、おびえたような目でこちらを見ている。
「あ、あの……ライザ様。今……笑っていませんでしたか?」
「いいえ、笑っていないわ」
「しかし……」
「気のせいじゃないかしら? それでは私は中へ入る事が出来ないのかしら?」
「い、いえいえ。そんな事はございません。カサンドラ様以外はこの離れへの出入りは自由ですから」
「そうなの? お母様もではここへ来ているのかしら?」
するとフットマンの顔色が変わった。
「い、いえ。奥様はこの屋敷を出ていかれました……。使用人を半分以上連れて……」
「え? お母様が屋敷を? それに半分以上の使用人を連れてって……一体どういうことなの?!」
「さ、さあ……そこまでの事はこの私にも分かりません。とりあえず、中へお入り下さい。実は先程迄カサンドラ様は暴れていたので飲み物の中に少量の睡眠薬を混ぜて飲ませたところなのです」
「え……ええっ!? す、睡眠薬を!?」
フットマンの話を聞いているうちに私はだんだん怖くなってきた。どうしよう……中へ入ってカサンドラに会うべきなのだろうか? だけどこれ以上踏み込めば取り返しのつかない事になりそうな気がする。
私が躊躇していると、フットマンが声をかけてきた。
「大丈夫です、ご安心下さい。カサンドラ様には足かせがはめられ、長いチェーンで柱に固定されています。ある一定以上の距離しか移動出来ませんので安心して出入りできます」
「あ……足かせっ!?」
どうしよう、何だかますますとんでもない話になってきた。怖い……中へ入るのが非常に怖いっ!
「あ、あの……カサンドラをここに閉じ込めたのも足かせも全てお父様の命令なの? そ、それで……お父様は今どこに?」
「はい足かせをはめたのは旦那様です。その旦那様ですが、3日後に行われる誕生パーティーに備えて色々準備があるそうでお戻りは明日の朝になります」
フットマンは重々しく頷く……が、お願いだからそんな沈痛な表情をしないで欲しい。
怖くなるから!
それにしても父は一体何を考えているのだろう? カサンドラをこんな場所に監禁しておきながら、3日後に盛大に誕生パーティーを行う?
もはや私の思考は停止寸前だ。足元から言い知れぬ恐怖がじわじわと上半身へと昇ってくるような感覚は耐えがたい。一刻も早くこんな場所を逃げ出さなければ。さっさとカサンドラの顔だけ拝んだらジュリアン侯爵の屋敷へ戻ろう。
「そ、それじゃ……カサンドラに会ってくるわ……」
私はごくりと息を飲むと、カチャリとドアを開けた。すると背後でフットマンが囁いてくる。
「頑張ってくださいね。ライザ様」
ヒッ!
すんでのところで悲鳴が漏れそうになるのを両手で口を押えて我慢する。
この男……まさか今のは嫌がらせで? 思わず涙目でフットマンを睨みつけるが、彼は明後日の方向を向いて知らんぷりしている。
文句を言ってやろうとした時に、部屋の奥で物音が聞こえて視線を移動した。
暗い……なんて薄暗い部屋なのだろう。部屋の窓には分厚いカーテンが閉められ、外の明かりを遮断している。薄暗い部屋は外が昼間だとは思えない。そういえば、外から子の離れを目にしたとき、カーテンが閉められていたことを思い出した。
その時――
「誰……そこにいるのは……。ま、まさか……おじさま……?」
薄暗い部屋から声が聞こえてきた――
今の状況に思わず笑みが浮かんでしまった。まさかあのカサンドラが父に監禁されているなんて。こんな面白い光景に遭遇できるとは、私は本当にラッキーだ。
すると見張りのフットマンは私の笑みに気づいたのか、おびえたような目でこちらを見ている。
「あ、あの……ライザ様。今……笑っていませんでしたか?」
「いいえ、笑っていないわ」
「しかし……」
「気のせいじゃないかしら? それでは私は中へ入る事が出来ないのかしら?」
「い、いえいえ。そんな事はございません。カサンドラ様以外はこの離れへの出入りは自由ですから」
「そうなの? お母様もではここへ来ているのかしら?」
するとフットマンの顔色が変わった。
「い、いえ。奥様はこの屋敷を出ていかれました……。使用人を半分以上連れて……」
「え? お母様が屋敷を? それに半分以上の使用人を連れてって……一体どういうことなの?!」
「さ、さあ……そこまでの事はこの私にも分かりません。とりあえず、中へお入り下さい。実は先程迄カサンドラ様は暴れていたので飲み物の中に少量の睡眠薬を混ぜて飲ませたところなのです」
「え……ええっ!? す、睡眠薬を!?」
フットマンの話を聞いているうちに私はだんだん怖くなってきた。どうしよう……中へ入ってカサンドラに会うべきなのだろうか? だけどこれ以上踏み込めば取り返しのつかない事になりそうな気がする。
私が躊躇していると、フットマンが声をかけてきた。
「大丈夫です、ご安心下さい。カサンドラ様には足かせがはめられ、長いチェーンで柱に固定されています。ある一定以上の距離しか移動出来ませんので安心して出入りできます」
「あ……足かせっ!?」
どうしよう、何だかますますとんでもない話になってきた。怖い……中へ入るのが非常に怖いっ!
「あ、あの……カサンドラをここに閉じ込めたのも足かせも全てお父様の命令なの? そ、それで……お父様は今どこに?」
「はい足かせをはめたのは旦那様です。その旦那様ですが、3日後に行われる誕生パーティーに備えて色々準備があるそうでお戻りは明日の朝になります」
フットマンは重々しく頷く……が、お願いだからそんな沈痛な表情をしないで欲しい。
怖くなるから!
それにしても父は一体何を考えているのだろう? カサンドラをこんな場所に監禁しておきながら、3日後に盛大に誕生パーティーを行う?
もはや私の思考は停止寸前だ。足元から言い知れぬ恐怖がじわじわと上半身へと昇ってくるような感覚は耐えがたい。一刻も早くこんな場所を逃げ出さなければ。さっさとカサンドラの顔だけ拝んだらジュリアン侯爵の屋敷へ戻ろう。
「そ、それじゃ……カサンドラに会ってくるわ……」
私はごくりと息を飲むと、カチャリとドアを開けた。すると背後でフットマンが囁いてくる。
「頑張ってくださいね。ライザ様」
ヒッ!
すんでのところで悲鳴が漏れそうになるのを両手で口を押えて我慢する。
この男……まさか今のは嫌がらせで? 思わず涙目でフットマンを睨みつけるが、彼は明後日の方向を向いて知らんぷりしている。
文句を言ってやろうとした時に、部屋の奥で物音が聞こえて視線を移動した。
暗い……なんて薄暗い部屋なのだろう。部屋の窓には分厚いカーテンが閉められ、外の明かりを遮断している。薄暗い部屋は外が昼間だとは思えない。そういえば、外から子の離れを目にしたとき、カーテンが閉められていたことを思い出した。
その時――
「誰……そこにいるのは……。ま、まさか……おじさま……?」
薄暗い部屋から声が聞こえてきた――