虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
4-7 驚くべき事実
――翌日
私はジュリアン侯爵の執務室へ呼ばれた。
「ああ、来てくれたんだね? ライザ」
ジュリアン侯爵が座る大きな書斎机には書類が山積みになっている。
「お忙しそうですね」
私は書類の山を見た。
「実はこの書類は全てモンタナ家に係わる訴状の書類なんだよ。ライザ、そこのソファに座るといい」
「えっ!? そうなんですか? もし差支えなければどのような書状か教えて頂けないでしょうか?」
ソファに座り、恐る恐る尋ねてみるとジュリアン侯爵は笑顔で答えてくれた。
「ええ、勿論。ではまずカサンドラの方から教えてあげるね」
「えっ! カサンドラは未成年ですよね……? それなのに訴状が?」
「ええ、でも彼女は明日で18歳。成人を迎える。なので明日から彼女を訴える事が出来るんだよ。罪状は妻子ある男性と恋仲になった事で離婚に追い込まれた学校教師の妻たちからだね。え~と被害者は5名いるよ。しかも全員子供がいるからね。彼女たちはそれはそれはカサンドラに対して怒っている。しかし相手がまだ17歳の未成年だから私が彼女達に待っていてもらったんだよ。カサンドラにしたって教師たちが全員結婚していたのを知っていたようだから…かなりの罪に問われるかもね。慰謝料も相当要求されると思うよ? それだけじゃない。モンタナ家に勤務していた若い使用人男性達にも手を出していて……可愛そうに。中には婚約者がいた女性もいたのに破談になってしまったそうだよ。その被害者たちからも同様の訴えが届いているんだ」
「え? そ、そんな事があったのですか……?」
驚いた。あの家から虐げられてきたので、悪女になってやろうと思ったのだが、カサンドラの悪女っぷりには私など足元にも及ばない。
すると次に別の書類の束にジュリアン侯爵は手を置いた。
「これはね、ライザの母君に関する訴状だよ」
「え! お、お母様にもですか……?」
「ああ。そうだよ、彼女も不倫をしていたからね。ライザ、君の家庭教師たちと。彼等にも家庭や、恋人がいたからね。でもカサンドラ程罪状は多くないかな? なにしろ君の母君は彼らに対価としてお金を支払っていたからね」
「そ、それでも……訴えが届いているのですよね……?」
「ああ、そうだよ」
「そして、この書類の山が君の父君、モンタナ伯爵の罪状だ」
そこには一段と高く山積みにされている書類がある。
「あ、あの……父に関する罪状の内容は……?」
これ以上聞くのは怖いが、恐る恐る私は尋ねてみた。するとジュリアン侯爵はこれまでにない程、真剣な目をしながら私を見た。
「ライザ……実はモンタナ伯爵はとても重大な犯罪を犯しているんだ。我々は証拠を集めるのに、それこそ何年も彼を追い詰めて、やっと証拠を集めて、彼を訴える準備が出来た処なんだ。もうすぐ全てが白日の下にさらされる。だからモンタナ伯爵の罪については今はまだ話す事が出来ないんだ」
「ジュリアン様……」
体の震えが止まらなかった。まさか父や母……そしてカサンドラまでが訴えられていたなんて。
「ライザ。震えているね? 大丈夫かい?」
ジュリアン侯爵は立ち上がると、私の隣に座り肩を抱いた。
「ジュリアン様は私がモンタナ家の人間だと知っていたのですか?」
すると沈痛な面持ちでジュリアン侯爵は頷く。
「いや、知らなかった。実は君はつい最近までモンタナ家の戸籍に名前がなかったんだよ。君の父は本当に酷い男だ。エンブロイ侯爵に君を差し出す話が出て慌ててライザを戸籍に入れたのだから」
「!」
あまりの衝撃的な事実に私は驚いた。だが、よくよく考えてみれば私を学校に入れなかったのは戸籍が無かったからだったのだ。
だけど、やはりショックだった。両親から愛されていないのは知っていたけれども、まさか戸籍すら入れてくれていなかったとは……。
目頭が熱くなり、項垂れるとジュリアン侯爵は語り掛けてきた。
「でも、ライザ。私は貴女を見つける事が出来た。貴女を助ける事が出来て本当に良かった」
そして涙を浮かべる私をそっと抱き寄せてくれた――
私はジュリアン侯爵の執務室へ呼ばれた。
「ああ、来てくれたんだね? ライザ」
ジュリアン侯爵が座る大きな書斎机には書類が山積みになっている。
「お忙しそうですね」
私は書類の山を見た。
「実はこの書類は全てモンタナ家に係わる訴状の書類なんだよ。ライザ、そこのソファに座るといい」
「えっ!? そうなんですか? もし差支えなければどのような書状か教えて頂けないでしょうか?」
ソファに座り、恐る恐る尋ねてみるとジュリアン侯爵は笑顔で答えてくれた。
「ええ、勿論。ではまずカサンドラの方から教えてあげるね」
「えっ! カサンドラは未成年ですよね……? それなのに訴状が?」
「ええ、でも彼女は明日で18歳。成人を迎える。なので明日から彼女を訴える事が出来るんだよ。罪状は妻子ある男性と恋仲になった事で離婚に追い込まれた学校教師の妻たちからだね。え~と被害者は5名いるよ。しかも全員子供がいるからね。彼女たちはそれはそれはカサンドラに対して怒っている。しかし相手がまだ17歳の未成年だから私が彼女達に待っていてもらったんだよ。カサンドラにしたって教師たちが全員結婚していたのを知っていたようだから…かなりの罪に問われるかもね。慰謝料も相当要求されると思うよ? それだけじゃない。モンタナ家に勤務していた若い使用人男性達にも手を出していて……可愛そうに。中には婚約者がいた女性もいたのに破談になってしまったそうだよ。その被害者たちからも同様の訴えが届いているんだ」
「え? そ、そんな事があったのですか……?」
驚いた。あの家から虐げられてきたので、悪女になってやろうと思ったのだが、カサンドラの悪女っぷりには私など足元にも及ばない。
すると次に別の書類の束にジュリアン侯爵は手を置いた。
「これはね、ライザの母君に関する訴状だよ」
「え! お、お母様にもですか……?」
「ああ。そうだよ、彼女も不倫をしていたからね。ライザ、君の家庭教師たちと。彼等にも家庭や、恋人がいたからね。でもカサンドラ程罪状は多くないかな? なにしろ君の母君は彼らに対価としてお金を支払っていたからね」
「そ、それでも……訴えが届いているのですよね……?」
「ああ、そうだよ」
「そして、この書類の山が君の父君、モンタナ伯爵の罪状だ」
そこには一段と高く山積みにされている書類がある。
「あ、あの……父に関する罪状の内容は……?」
これ以上聞くのは怖いが、恐る恐る私は尋ねてみた。するとジュリアン侯爵はこれまでにない程、真剣な目をしながら私を見た。
「ライザ……実はモンタナ伯爵はとても重大な犯罪を犯しているんだ。我々は証拠を集めるのに、それこそ何年も彼を追い詰めて、やっと証拠を集めて、彼を訴える準備が出来た処なんだ。もうすぐ全てが白日の下にさらされる。だからモンタナ伯爵の罪については今はまだ話す事が出来ないんだ」
「ジュリアン様……」
体の震えが止まらなかった。まさか父や母……そしてカサンドラまでが訴えられていたなんて。
「ライザ。震えているね? 大丈夫かい?」
ジュリアン侯爵は立ち上がると、私の隣に座り肩を抱いた。
「ジュリアン様は私がモンタナ家の人間だと知っていたのですか?」
すると沈痛な面持ちでジュリアン侯爵は頷く。
「いや、知らなかった。実は君はつい最近までモンタナ家の戸籍に名前がなかったんだよ。君の父は本当に酷い男だ。エンブロイ侯爵に君を差し出す話が出て慌ててライザを戸籍に入れたのだから」
「!」
あまりの衝撃的な事実に私は驚いた。だが、よくよく考えてみれば私を学校に入れなかったのは戸籍が無かったからだったのだ。
だけど、やはりショックだった。両親から愛されていないのは知っていたけれども、まさか戸籍すら入れてくれていなかったとは……。
目頭が熱くなり、項垂れるとジュリアン侯爵は語り掛けてきた。
「でも、ライザ。私は貴女を見つける事が出来た。貴女を助ける事が出来て本当に良かった」
そして涙を浮かべる私をそっと抱き寄せてくれた――