虐げられた人生に別れを告げた私は悪女の道を歩む
1-6 紳士と私
なんて美しい男性なのだろう……。私は暫くの間、その男性に見惚れていた。
「もしもし、レディ? どうされましたか?」
あまりにも長い事私は男性を見つめ過ぎていたのか、困ったように声をかけてきた。
「も、申し訳ございませんでした! あまりにも不躾にジロジロ見てしまいました……」
すると男性は笑みを浮かべた。
「いいえ、レディの様に美しい女性に見つめられるのは悪い気がしませんよ」
「え?」
この男性は今何と言ったのだろう?私の事を美しいと言ったような……。この男性は視力でも悪いのだろうか? 思わずぽかんと口を開けて男性をマジマジと見つめてしまった。
「レディ?」
「す、すみません。ぼーっとしてしまって……それでは、失礼致します」
スケッチブックを袋にしまい、立ち去ろうとした時に男性が声をかけてきた。
「レディ!」
「はい?」
振り向くと男性がこちらをじっと見つめている。
「あの……また明日、ここで会えませんか?」
「えっ!?」
一体何を言い出すのだろう?
「いえ、実は……あまりにも貴女の絵が見事だったので、何かまた描いて頂けないかと思ったのです。出来ればその絵を買い取らせて頂きたいのです」
「私の絵を……ですか?」
「はい、そうです。貴女の絵の才能は本当に素晴らしい。さぞかし有名な画家の元で教えを頂いたのでしょうね?」
「い、いえ……。独学ですが……」
「そうなのですか!? それなら貴女は類まれなる才能の持ち主なのですね? きっと本格的に絵を習えば、あっという間に売れっ子の画家になれるに決まっています!」
「いえ。どなたかは存じませんが、買いかぶり過ぎです。元々先程のイラストも自分の持っている古いドレスを今風にリメイクしようと思い、参考の為にショーウィンドウのドレスを描き写しただけですので」
すると男性はますます驚いた様に声を上げた。
「何ですって!? そ、それでは先程の絵は脳内で記憶した映像をイラストにしたわけですね!?」
男性は何処までも大袈裟に物事を捉えすぎている。
「え、ええ……でも本当に対した事ではありませんので……」
話をしながら広場に立っている時計台を見た。もう既に時刻は13時半を過ぎている。ああ……これで私はまたもや食事を食べ損なってしまった。
そう思った矢先――
グウウ〜……
お腹が大きな音を立てて鳴った。
い、いけない……っ!!
思わず顔が真っ赤になり、男性はポカンとした顔で私を見ている。
「レディ……今の……」
言いかけた所へ私は大きな声で叫んだ。
「聞かなかった事にして下さいっ!!」
すると何を思ったか、男性は右手をスッと私の前に差し出してきた。
「レディ、実は私はまだ昼食を食べていないのです。もしよろしければ私の食事に付き合って頂けないでしょうか? 1人で食べる食事は味気ない物でして」
「え……?」
そ、それは……まさか私に食事をご馳走してくれるという事なのだろうか……?
思わずゴクリと喉が鳴ってしまい、またもや男性にその音を聞かれてしまった。
ああ……穴が合ったらはいりたい……。
しかし、彼はニコリと笑みを浮かべると私の左手を握りしめてきた。
「!」
驚いて顔を上げると、彼の視線がまっすぐ私を見つめている。
「さあ、一緒に参りましょう。この通りにある店は私の馴染みの店なのです。若い女性にも人気のある店なのですよ。参りましょう」
「あ、有難うございます……」
私はますます顔を赤らめて俯いた――
「もしもし、レディ? どうされましたか?」
あまりにも長い事私は男性を見つめ過ぎていたのか、困ったように声をかけてきた。
「も、申し訳ございませんでした! あまりにも不躾にジロジロ見てしまいました……」
すると男性は笑みを浮かべた。
「いいえ、レディの様に美しい女性に見つめられるのは悪い気がしませんよ」
「え?」
この男性は今何と言ったのだろう?私の事を美しいと言ったような……。この男性は視力でも悪いのだろうか? 思わずぽかんと口を開けて男性をマジマジと見つめてしまった。
「レディ?」
「す、すみません。ぼーっとしてしまって……それでは、失礼致します」
スケッチブックを袋にしまい、立ち去ろうとした時に男性が声をかけてきた。
「レディ!」
「はい?」
振り向くと男性がこちらをじっと見つめている。
「あの……また明日、ここで会えませんか?」
「えっ!?」
一体何を言い出すのだろう?
「いえ、実は……あまりにも貴女の絵が見事だったので、何かまた描いて頂けないかと思ったのです。出来ればその絵を買い取らせて頂きたいのです」
「私の絵を……ですか?」
「はい、そうです。貴女の絵の才能は本当に素晴らしい。さぞかし有名な画家の元で教えを頂いたのでしょうね?」
「い、いえ……。独学ですが……」
「そうなのですか!? それなら貴女は類まれなる才能の持ち主なのですね? きっと本格的に絵を習えば、あっという間に売れっ子の画家になれるに決まっています!」
「いえ。どなたかは存じませんが、買いかぶり過ぎです。元々先程のイラストも自分の持っている古いドレスを今風にリメイクしようと思い、参考の為にショーウィンドウのドレスを描き写しただけですので」
すると男性はますます驚いた様に声を上げた。
「何ですって!? そ、それでは先程の絵は脳内で記憶した映像をイラストにしたわけですね!?」
男性は何処までも大袈裟に物事を捉えすぎている。
「え、ええ……でも本当に対した事ではありませんので……」
話をしながら広場に立っている時計台を見た。もう既に時刻は13時半を過ぎている。ああ……これで私はまたもや食事を食べ損なってしまった。
そう思った矢先――
グウウ〜……
お腹が大きな音を立てて鳴った。
い、いけない……っ!!
思わず顔が真っ赤になり、男性はポカンとした顔で私を見ている。
「レディ……今の……」
言いかけた所へ私は大きな声で叫んだ。
「聞かなかった事にして下さいっ!!」
すると何を思ったか、男性は右手をスッと私の前に差し出してきた。
「レディ、実は私はまだ昼食を食べていないのです。もしよろしければ私の食事に付き合って頂けないでしょうか? 1人で食べる食事は味気ない物でして」
「え……?」
そ、それは……まさか私に食事をご馳走してくれるという事なのだろうか……?
思わずゴクリと喉が鳴ってしまい、またもや男性にその音を聞かれてしまった。
ああ……穴が合ったらはいりたい……。
しかし、彼はニコリと笑みを浮かべると私の左手を握りしめてきた。
「!」
驚いて顔を上げると、彼の視線がまっすぐ私を見つめている。
「さあ、一緒に参りましょう。この通りにある店は私の馴染みの店なのです。若い女性にも人気のある店なのですよ。参りましょう」
「あ、有難うございます……」
私はますます顔を赤らめて俯いた――