完璧ブラコン番長と町の謎



 小野を認識したのは、あの大蛇と遭遇した時じゃない。
 お昼休みに、教室を覗き込んだ時のことだった。
 うちの学校は給食・弁当を選択できる。給食を選んだやつは机をくっつけて食べ、弁当を持参するやつは教室の外で食べることが多い。
 けれど小野は、教室で、それも一人で、弁当を食べていた。
 皆が集まっている中、一人で食べたり休み時間を過ごすことを恥じるやつは多い。中学校に上がったらそれは顕著だ。俺は体調不良を理由によく一人になっているが、クラスメイトのやつは皆口を揃えて『一人で平気なの、お前ぐらいだよ』と言った。あの千尋さえも、『アンタってしょっちゅう引きこもるよね』と言うぐらいだった。
 一人を好むというか、厄介事を避けようと一人になるのは、竜二ぐらいじゃないだろうか。

 だけど、集団から外れて食べている小野は――なんだか、とても楽しそうだった。

 もちろん、満面の笑みを浮かべているわけじゃない。けれど、その状態が自然で、楽しんでいるようだった。
 たまに誰かから声を掛けられて、楽しそうに返事をする。一言二言会話して、なごやかに別れる。
 竜二のように拒絶するわけではなく、俺のように物理的な距離を置くわけじゃない。大勢の中で一人になっても、誰にも気後れせず、堂々としている。
 その様子が、「いいな」と思った。

 だから小野が、妖怪が視えるじゃないかと思った時、胸が高鳴った。
 ナツと同じ秘密を持つ人。大蛇すら倒してしまう『包丁師』見習い。
 カリスマ性でどこか遠巻きにされる千尋を、知り合ったばかりで「ちーちゃん」と呼んだり、「番長」などと呼ばれる俺に臆さず、変に持ち上げることなく、対等に話しかける女子。
 それで――ナツや俺を、いつも気にかけてくれる、たった一人の同級生。
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