完璧ブラコン番長と町の謎
「って、話をそらさないでくださる!?」
くわっと、真里亞さんが目を見開く。
「いいこと、もう冬夜に近づかないでちょうだい。今度似たようなことがあったら、ただじゃ――」
「何馬鹿なことやってんの」
後ろからちーちゃんが、真里亞さんの頭を軽く叩いた。
丁寧に梳かれた真里亞さんの髪が、少しだけふわっと浮く。
ちーちゃんの登場に、さらに周りの女子がざわめいた。
「ごめんね、あかり。大丈夫?」
「ちーちゃん」
「ちーちゃんですって⁉」
カッ、と真里亞さんの目が見開く。
「あああああなた、まさか冬夜だけでなく、千尋までたぶらかしたの⁉」
「誑かされてないっての。幼馴染として恥ずかしいから、いい加減口閉じて」
はあ、と呆れたようにちーちゃんがため息をつく。
「あんたね、盗撮は犯罪だって、技家で習ったでしょ? 何堂々と見せてんのよ」
「だ、だって、冬夜が……」
「冬夜はね、あんたと違って、自分の不利益なことはちゃんと断るの。同級生に良いように使われるわけないでしょ」
あんたと違って、という声が、心の中でつぶやかれた気がする。
だけど真里亞さんはそれどころじゃないようで、わなわなと口を震わせながら、涙をぽろぽろと零していた。
私はぎょっとしたけど、ちーちゃんは全く動じなかった。
真里亞さんは叫んだ。
「ち、千尋のばかー! 千尋だって、冬夜のことが好きなくせにぃぃぃ!」
そう叫びながら、廊下を走っていく真里亞さんに、ちーちゃんは、
「事実無根を言いふらすなー」
と、のんびりした声で言うのだった。