完璧ブラコン番長と町の謎
「だから、嬉しかったの。あかりが、ああ言ってくれて」
「え?」
何か言ったっけ?
「最初に会った時、『自分はステータスで人を見ない』って言ったでしょ? あれ、本当に嬉しかった。
あの子はずっと、『金持ちのお嬢様』としか見られなくて、利用されていたから……」
ああ、と私は納得した。
あの言葉は、冬夜くんじゃなくて、真里亞さんを想ってのことだったんだ。
もしかしたら、「売られたケンカを買った」というのも、真里亞さんを利用しようとする人たちから守ったものなのかもしれない。
そう思うと、私はするり、と思ったことを口にしていた。
「好きなんだね、真里亞さんのこと」
ブハッ!!
ちーちゃんが、飲んでいた豆乳を吹き出した。
「……」
思わず私は、目を瞬かせる。
ちーちゃんは顔を真っ赤にしながら、黙って口元を拭っていた。
……私は「友愛的な好き」で言ったつもりだったけど、どうやらこの反応は、「そういう好き」の方らしい。野暮な事をしてしまった。
「さっきの言葉、聞かなかったことにしてくれる? 私も、見なかったことにするから」
「お気遣いどうもありがとう……」
ちーちゃんは一通りハンカチで拭ってから、「私のことはいいのよ!」と切り返す。
「で、どうなの、あかり。行ったの? 冬夜とデートに」
「デートっていうか……なんと言うか……」
まさか妖怪の話をするわけにもいかないので、私ははしょることにした。
「単に一緒に遊びに行っただけだよ。付き合ってるとか、そういうのじゃなくて」
「ふーん。ま、そうよね」
あっさりとちーちゃんは納得してくれた。
「あいつにあかりは勿体ないもの」
「勿体ないって……」
ちーちゃん、『ルックスもいいし、成績も優秀。面倒見もいいから、すっごくモテる』って言ってなかったっけ?