完璧ブラコン番長と町の謎
だから、油断していた。
その日も集団で遊んで、家まで送って、その最後の一人と別れた瞬間。
影の形をした妖怪が、その子を襲おうとした。
それに気づいた夏樹くんが、真っ先に駆け出した。
――私の体は、夏樹くんより早く動けなかった。
黄昏の時間は、妖怪が出始める頃だってわかっていたのに。
襲うような妖怪は、真っ先に倒すべきなのに。
『妖怪は退治するだけ』のあの頃なら、絶対に見誤らないような失敗をした。
「ねーちゃん! ねーちゃん!」
夏樹くんが、私の上で叫ぶ。
夏樹くんの顔には、目いっぱいの涙が浮かんでいる。
私がやったのは、密かに持っている刀で妖怪を倒すことではなかった。
自分の体を盾にして、夏樹くんを庇うという、馬鹿な行為だった。
戦える私が倒れたら、次に夏樹くんかあの子が襲われる可能性があるのに。
真っ先に倒せば、間違いなく三人とも倒せたのに。
ただ、刀を抜いている暇があれば、夏樹くんに傷を負わせるんじゃないかと、恐れた。