結婚について、本気出してみた。
昼間、近所を歩いていると、お肉屋さんを見つけた筒香花菜。
イマドキお肉屋さんって珍しいかも。
そう思って何の気なしに入ってみると、市原悦子のようなおばあさんが割烹着を着て、せっせとトンカツを揚げていた。
「すみません。メンチカツを一つ」
と注文する筒香花菜。市原悦子似のおばあさんは、「はいよ」と低い声で揚げてくれた。
揚げたてのメンチカツを一つ食べながら、新しい街を歩く筒香花菜。道端にたんぽぽが咲いていた。
「それ、セイヨウタンポポって言うんですよ」
と近所の小学生の男の子が教えてくれた。小学生の男の子は、セイヨウタンポポの前でしゃがみ込んで、じーっと虫眼鏡を近づけていた。
「何か見えるの?」
「何も。見えたらいいなって」
「見えないのに、見ようとするってなんか、将来みたいだね」
「おばさんの将来は、僕の頃に思い描いてたものと同じでしたか?」
「うーん」と考えながらも、「おばさん」というキラーワードにどうしても引っかかる筒香花菜。
「まあ、おじさんになればわかるんじゃないかな?」
「おばさんがおじさんに?」
「ううん。キミがおじさんに」