結婚について、本気出してみた。




そんな感じで、あとはダラダラと過ごす。朝からビールを買って、それを土手で飲むことだってあるし、ヒトカラに行くことだってある。


ただ、最近の筒香花菜は、そのまま9時前に、203号室のカンバラ息子の部屋に行く。


「今日はこれだけ書けたから」


そう言われ、渡されたA4用紙に書かれた手書きの小説を、筒香花菜が原稿にしていく。この時、誤字があれば、直すし、段落分けや句読点のタイミングまで任されている。


大体、いつも3時間ほどで終わる。多く書いている時や、寝ぼけて書いたのであろう、文字が汚い時はもう少し時間がかかる。


「この主人公って、どうしてこうも受け身なんですか?」


「それは、主人公だからだよ」


「主人公は、自分で道を切り開くみたいな方が、私は好きですけどね」


「それは漫画の話だろ? 小説はこれでいいんだよ、これで」


カンバラ息子の部屋には、本棚がある。本棚には何冊か小説の文庫本が入っていて、そのタイトルはどれも聞いたことがあるような名作ばかりだ。


「好きな小説家っているんですか?」


「やっぱり太宰治かな」


とカンバラ息子は答えた。筒香花菜は「あー、っぽい」と思った。カンバラ息子の小説には、節々に、太宰治に感化されたような文章が散りばめられてある。



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