結婚について、本気出してみた。
筒香花菜は、20歳の時、小説の新人賞で佳作を獲ったことがある。
出版社にこのまま小説家としてデビューを勧められたが、当時付き合っていた彼氏が売れないバンドマンだったため、遠慮した。
別れてからもたまに、元カレのバンドをネット検索する。最近はYouTubeに力を入れているようだけど、再生回数は、どの動画も、3桁くらいで、身内ネタや、PVらしきものの動画、散々擦られた推した流行りのネタなんかをアップしている。
「お前なんか一生売れねえよ!」
別れ際に言った言葉って、意外と言われた本人よりも覚えているものだ。
でも、律儀に有言実行してくれているのか、元カレは35歳になろうというのに、一向に売れる気配がない。
筒香花菜は不思議でたまらない。売れないならやめればいいし、やめなければどこかでチャンスが巡ってきて売れそうなものなのに、と、いつも思う。